扶養を命ずる審判に対する抗告事件の係属中に扶養権利者が死亡した場合に、抗告審が、死亡時までの扶養料債権が金銭債権として相続の対象となると解し、相続人に受継させたうえ抗告人にその支払を命じたとき、抗告審の右見解の当否は抗告人において別途民事訴訟によつてこれを争うことができ、いかなる意味においても憲法違反の問題を生ぜず、その特別抗告は民訴法四一九条の二所定の場合にあたらない。
扶養を命ずる審判に対する抗告事件の係属中に扶養権利者が死亡した場合に抗告審が死亡までの扶養料債権が相続の対象となるとして相続人に受継させ抗告人に支払を命じたことと違憲の主張
民法896条但書,家事審判規則15条,民訴法419条ノ2
判旨
親族間の扶養請求権に関する原決定の解釈の当否は、別途民事訴訟により争うことができるため、憲法違反の問題は生じない。したがって、単なる法令違背の主張は、最高裁判所への特別抗告の事由となる違憲の主張には当たらない。
問題の所在(論点)
親族間の扶養請求権に関する法令解釈の誤りを「違憲」と主張して申し立てられた特別抗告が、民事訴訟法(旧法419条の2)に規定される抗告事由に該当するか。
規範
最高裁判所への特別抗告(旧民事訴訟法419条の2、現行336条1項)が許容されるのは、憲法の解釈の誤りその他憲法違反の事由がある場合に限られる。単なる法令の解釈・適用の誤り(法令違背)の主張は、それが実質的に違憲をいうものであっても、別途民事訴訟等によって争う手段が用意されている限り、憲法違反の問題を生ずるものではない。
重要事実
抗告人は、親族間における扶養請求権についての原決定に対し、憲法違反を理由として最高裁判所に特別抗告を申し立てた。しかし、その主張の実質は、扶養請求権に関する原決定の解釈に法令違背があるという点にあった。
事件番号: 昭和26(ク)60 / 裁判年月日: 昭和26年5月21日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法において特に最高裁判所への抗告申立てが許容されている場合に限られる。民事事件における最高裁判所への抗告理由は、原決定における憲法判断の不当性を主張するもの(旧民訴法419条の2)に限定される。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し…
あてはめ
抗告人が主張する違憲の根拠は、実質的には親族間扶養請求権の解釈という法令解釈の問題にすぎない。この点については、抗告人は別途民事訴訟によってその当否を争うことが制度上可能である。そうである以上、原決定の解釈が直ちに憲法違反の問題を引き起こすとはいえず、適法な抗告理由としての憲法違反の主張には当たらないと解される。
結論
本件抗告は法定の抗告事由を欠き、不適法であるため却下される。
実務上の射程
特別抗告の事由である「憲法違反」の厳格性を再確認するものである。法令解釈の誤りを憲法違反にすり替えて主張しても、他の権利救済手段(民事訴訟等)が存在する限り、門前払いされることを示す。答案上は、不服申立制度の趣旨や憲法問題の終局的解決権限の範囲を論ずる際の補強資料として用いる。
事件番号: 昭和26(ク)204 / 裁判年月日: 昭和26年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民事訴訟法(当時)により憲法違反の判断が含まれる場合に限定され、実質的に法令解釈の不当を争うものは不適法である。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定が憲法第29条(財産権)に違反するものであると主張して、最高裁判所に対し抗告を申し立てた。しかし、その主張の具体的内容は、実…
事件番号: 昭和26(ク)181 / 裁判年月日: 昭和26年9月26日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所が抗告に関して裁判権を有するのは、訴訟法上特に最高裁判所への抗告が許容されている場合に限られる。民事事件においては、原決定における憲法判断の不当を理由とする特別抗告(旧民訴法419条の2)のみがこれに該当する。 第1 事案の概要:抗告人が最高裁判所に対して抗告を申し立てた事案。本件の抗告…
事件番号: 昭和29(ク)4 / 裁判年月日: 昭和29年3月15日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する特別抗告(民訴法336条、旧419条の2)が適法となるためには、原決定に憲法違反があることを具体的に主張する必要があり、実質的な訴訟法違反や事実誤認の主張は適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定(原判決を維持したもの)に対し、最高裁判所へ抗告を申し立てた。…
事件番号: 昭和39(ク)104 / 裁判年月日: 昭和39年4月28日 / 結論: 却下
民訴規則第四六条違背の抗告理由は不適式であり、該抗告は却下を免れない(民訴規則第五三条は上告審には適用がない)。