約束手形の満期が裏書後裏書人の同意を得ないで変造された場合、所持人が右裏書人に対して遡及権を行使するためには変造前の満期にしたがつてその保全手続をとらなければならない。
約束手形の満期の変造と裏書人の遡及義務
手形法44条,手形法46条,手形法69条,手形法77条1項4号,手形法77条1項7号
判旨
手形上の記載事項が無断で変造された場合、変造前に署名した者は変造前の文言に従って責任を負うため、変造前の満期に基づき遡及権保全手続がなされない限り、遡及義務を負わない。
問題の所在(論点)
手形の満期が無断で訂正(変造)された場合、変造前に裏書した者は、いかなる条件のもとで遡及義務を負うか。変造後の満期に従った呈示で足りるか、あるいは変造前の満期に従った保全手続が必要かが問題となる。
規範
手形法69条に基づき、手形の文言に変造がある場合、変造前に署名した者は変造前の文言に従って責任を負う。満期が変造された場合、署名当時の満期を基準として遡及権保全手続(支払呈示等)がなされることが、遡及義務履行の停止条件となる。
重要事実
被上告人が本件手形に裏書した際、満期は「昭和48年4月7日」と記載されていた。その後、被上告人の同意を得ることなく、満期が「昭和49年2月12日」に書き換えられた。所持人である上告人は、訂正後の満期に基づいて手形上の権利を主張したが、訂正前の満期(昭和48年4月7日)に従った適法な遡及権保全手続はとられていなかった。
あてはめ
被上告人は変造前に裏書をしているため、手形法69条により変造前の文言、すなわち「昭和48年4月7日」を満期とする手形上の債務を負う。遡及義務を発生させるには、この変造前の満期に従って適法に支払呈示等の遡及権保全手続がなされる必要がある。しかし、本件では変造前の満期に従った保全手続がとられていないことが明らかであり、遡及義務の発生要件を欠いていると評価される。
結論
上告人は、被上告人に対して遡及権を行使することができない。
実務上の射程
手形法69条の原則(変造前の署名者は旧文言に、変造後の署名者は新文言に従う)を、満期の変造と遡及権保全手続の関係に適用した事例。答案上は、変造がある場合に「誰が」「いつ」署名したかを確定し、各当事者が負う義務の内容(満期、金額等)を分断して検討する際の根拠となる。
事件番号: 昭和36(オ)1198 / 裁判年月日: 昭和41年11月10日 / 結論: 棄却
一 約束手形の受取人欄の記載が無権限で抹消された場合は手形の変造にあたり、振出人は、変造前の文言に従つて責任を負う。 二 前項の場合、変造後の当該手形の所持人は、当初の受取人から同手形を取得した経路とその取得をもつて振出人に対抗しうる事由を主張立証しないかぎり、振出人に対し手形金の支払を請求することができない。