候補者の氏名の下に「御中」と付記した投票は、公職選挙法六八条五号のいわゆる他事記載あるものとして無効である。
候補者の氏名の下に「御中」と付記した投票と他事記載
公職選挙法68条5号
判旨
投票用紙に候補者の氏名のほか「御中」と付記することは、単なる敬称の類にとどまらず、公職選挙法68条5号(現行:8号)にいう「他事記載」に該当し、当該投票は無効となる。
問題の所在(論点)
投票用紙における候補者の氏名の下の「御中」という付記は、公職選挙法68条に規定される「他事記載」に該当し、投票が無効となるか。
規範
公職選挙法上の「他事記載」とは、候補者の氏名のほか、投票用紙に記載が禁止されている事項を記入することを指す。単なる敬称の類であれば有効とされる余地があるが、「へ」「に」「宛」などの提示の意思を表す文言が付記された場合は、他事記載として投票を無効とするのが相当である。
重要事実
選挙において、ある投票者が投票用紙に候補者の氏名を記載した際、その氏名の下に「御中」という文言を付記して投票した。この「御中」の付記が他事記載(公職選挙法68条5号※当時)に該当するか否かが争われた。
あてはめ
事件番号: 昭和40(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和40年9月21日 / 結論: 棄却
一 「モリヤゲン」と記載された投票は、候補者守Bが「モリゲン」の通称を有する以上、他に候補者守屋Dがあり、また右Bの父で同じく「モリゲン」の通称を有する守Eに判示の事情が認められるとしても、これを候補者守Bの得票と認めるのが相当である。 二 候補者丹野Fが屋号を丹長と称し、「(記載内容は末尾添付)」をその記号として使用…
「御中」という文言は、単に相手を敬う敬称としての性質を超え、「へ」「に」「宛」と同様に、特定の対象に対して差し出すという「呈示の意思」をあらわすために用いられるものである。したがって、これは単なる敬称の類とはいえず、公職選挙法が禁止する他事記載に該当すると評価される。
結論
「御中」と付記された投票は他事記載に当たり、無効である。
実務上の射程
自書式投票において、候補者氏名以外の記載がどの程度許容されるかの基準を示す。単なる敬称(「殿」や「様」など)であれば有効とされる傾向にあるが、送付や提示の意思が明確な文言(「へ」「宛」「御中」等)は厳格に他事記載として排除される点に注意が必要である。答案上は、記載事項が単なる敬称か、それとも独自の意味内容を持つ他事記載かを区別する際のメルクマールとして利用できる。
事件番号: 昭和35(オ)711 / 裁判年月日: 昭和35年10月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】投票用紙に候補者の氏名のほか「江」という敬称を付す記載は、公職選挙法68条5号の他事記載に該当し無効である。一方で、氏名の誤記や他候補者の氏名との混同がある場合でも、他候補者の氏名等と比較して特定の候補者に対する投票意思が認められれば有効となる。 第1 事案の概要:村長選挙の効力に関する訴訟におい…
事件番号: 昭和47(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和47年7月20日 / 結論: 破棄差戻
市議会議員選挙において候補者に中野光弘と白沢実とがある場合に、「中野実」「中の実」と記載された投票は、中野光弘候補が同じころ執行された県議会議員選挙に同じ政党の公認をうけて立候補した荒木実と共同して選挙活動をしていた事実があつても、中野光弘に対する有効投票と解することはできない。
事件番号: 昭和40(行ツ)16 / 裁判年月日: 昭和40年6月18日 / 結論: 棄却
Dという姓を同じくし、武一、文三と名を異にする候補者のある場合に、「D文一」、「文一」「D文一(ブンイチ)」と記載された各投票は、帰属を決しがたい無効投票と解するのが相当である。
事件番号: 昭和35(オ)493 / 裁判年月日: 昭和35年9月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法上の投票の効力判定において、候補者の氏名を正確に記載していない投票であっても、その記載内容から特定の候補者を指すと客観的に認められる場合には、当該候補者に対する有効投票として認められる。 第1 事案の概要:村議会議員選挙において、被上告人(候補者)に対するものと考えられる投票の中に、「D…