ゴルフ場経営を目的とする株式会社が、ゴルフ場用地の一部として賃借していた土地の賃借権を、賃貸人に無断で他の株式会社に譲渡したときでも、当該賃貸人に賃貸借契約締結の当初から不誠実な態度があつたほか、譲受会社が元来賃借会社の子会社として当該ゴルフ場運営のために設立された会社であり、また、他の百余名の賃貸人らがすべて賃借権の譲渡に承諾を与えている等、判示の事情がある場合においては、右譲渡当時、譲受会社が賃借会社の子会社たる地位を失つていて、賃借会社とは別個独立に当該ゴルフ場を経営するに至つていたとしても、そのことから直ちに、右譲渡が賃貸人に対する背信行為に当たらないとみることはできないとは言えず、賃借地の使用収益の方法や賃料支払の確実性等に実質約影響があるかどうかなど判示の諸点についても審理を尽くすことを要する。
賃借権の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為に当たらないとみることはできないとした判断に審理不尽があるとされた事例
民法612条,民訴法394条
判旨
賃借権の無断譲渡が行われた場合であっても、土地の使用収益の方法、経営者の信用、賃料支払の確実性等に実質的な変化がなく、賃貸人に不利益を及ぼさない特段の事情があるときは、賃貸人に対する背信行為と認めることはできない。
問題の所在(論点)
賃借権の無断譲渡がなされた場合において、譲渡人と譲受人が親子会社の関係にあり、かつ賃貸人側に不誠実な対応があるなど、賃貸人に実質的な不利益が生じない事情がある場合、民法612条2項による解除は認められるか。
規範
民法612条2項に基づく解除権の発生には、賃借権の無断譲渡・転貸が賃貸人に対する「背信的行為と認めるに足りない特段の事情」がないことを要する。その判断にあたっては、譲受人と賃借人の関係、譲渡後の使用収益の態様、経営者の信用の程度、賃料支払の確実性、および賃貸人側の主観的・客観的態様(賃貸条件の経緯等)を総合的に考慮すべきである。
重要事実
事件番号: 昭和42(オ)657 / 裁判年月日: 昭和46年6月22日 / 結論: 棄却
宅地の賃借人が借地の一部について借地権を第三者に譲渡した場合において、右譲渡部分が約四二〇平方メートルの借地のうち最も価値の低い部分にあたる約七〇平方メートルにすぎず、賃借人が従来の事情から右譲渡につき賃貸人の承諾が得られるものと思い、その際の名義書替料として相当の金員を賃貸人に支払うことを予定していた等、判示のような…
賃借人であるゴルフ場運営会社Aが、賃貸人Xに無断で子会社Bに賃借権を譲渡した。X以外の他の地主100余名は譲渡を承諾していたが、Xのみが拒否し、無断譲渡を理由に契約解除と土地明渡しを請求した。Xは契約締結時に高額な賃料や裏金の支払いを強いており、些細な感情の縺れから短期間での契約終了を主張するなど、不誠実な態度が見られた。原審は、AとBの代表者が異なり別法人であることを重視して背信性を肯定した。
あてはめ
本件では、譲受人BはAの子会社として設立され、当初は役員も共通しており、ゴルフ場運営という継続的事業を目的としていた。また、他の地主全員が承諾している中でXのみが拒絶している点は信義則上問題がある。さらに、Xは高額賃料の強要や裏金の受領、短期間での明渡し請求など不誠実な態度を維持しており、Bによる使用収益がXに実質的な不利益を及ぼすとは断じ難い。経営者が異なるに至った点のみを重視せず、土地の使用態様や賃料支払の確実性等への実質的影響を審理すべきである。
結論
無断譲渡が賃貸人に対する背信行為にあたらないと解する余地があるため、背信性の有無を十分に審理せずに解除を認めた原判決は、民法612条の解釈適用を誤った違法がある。
実務上の射程
無断譲渡における「背信行為論」の判断要素を具体化した判例。形式的に「別法人への譲渡」があれば解除できるとするのではなく、親子会社関係等の実質的同一性や、賃貸人側の不誠実な態度も「特段の事情」の認定において考慮される点に実務上の射程がある。
事件番号: 昭和27(オ)658 / 裁判年月日: 昭和29年7月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法612条2項に基づく賃貸人の解除権が発生するためには、単に賃借権の譲渡があるだけでは足りず、第三者に現実に土地を使用収益させることが必要である。 第1 事案の概要:賃借人は、敷地上の建物とその敷地の賃借権を、建物の譲渡及び引渡しと同時に第三者Dへ譲渡移転する旨の契約を締結した。しかし、第三者D…
事件番号: 昭和39(オ)697 / 裁判年月日: 昭和40年5月21日 / 結論: 棄却
無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除が権利の濫用として許されない場合には、特段の事情がない限り、転借人に対し土地所有権に基づく土地明渡請求は許されない。