仮処分に対する異議訴訟において、当該仮処分を保全の必要性がないとして取り消し、その仮処分申請を却下する旨の判決が言い渡され、これが確定した場合、この確定判決は、右仮処分が不法行為を構成するとして仮処分債務者によつて提起された仮処分債権者に対する損害賠償訴訟の係属する裁判所を法律上拘束するものとはいえない。
仮処分異議訴訟における仮処分却下の確定判決と当該仮処分が不法行為であるとして提起された損害賠償訴訟に対する拘束力
民法709条,民訴法201条
判旨
仮処分を取り消す確定判決は、その仮処分の不法行為該当性を争う損害賠償訴訟の裁判所を法律上拘束するものではない。
問題の所在(論点)
仮処分を保全の必要性欠如により取り消す確定判決が、その仮処分に基づく損害賠償訴訟において、仮処分の不法行為該当性(違法性)に関する判断を法律上拘束するか。
規範
仮処分異議訴訟において保全の必要性がないとして仮処分を取り消す旨の判決が確定した場合であっても、当該確定判決は、仮処分債権者に対する損害賠償請求訴訟(不法行為)を受理した裁判所を法律上拘束するものではない。したがって、後訴の裁判所は、前訴の結論に左右されず、当該仮処分が不法行為上の違法性を有するか否かを独自に判断すべきである。
重要事実
仮処分債権者による仮処分申請が認められたが、その後の仮処分異議訴訟において「保全の必要性がない」との理由で仮処分が取り消され、その判決が確定した。これを受け、仮処分債務者(上告人)が、当該仮処分は不法行為を構成するとして、仮処分債権者に対し損害賠償を求める訴えを提起した。上告人は、前訴の仮処分取消判決の判断が、後訴の裁判所を拘束すると主張して争った。
あてはめ
仮処分命令が後に取り消されたとしても、それが直ちに不法行為法上の違法を意味するわけではない。本件では、前訴において保全の必要性がないとして仮処分が取り消された事実は認められるものの、後訴の裁判所は前訴の判断に拘束されることなく、不法行為の成否を判断できる。原審が確定した事実関係に基づき、本件仮処分が違法ではないと判断したことは正当であり、また、上告人が後になって主張した廃川敷の売買予約締結等の事実によって、遡及的に仮処分が違法となるものでもない。
結論
仮処分取消しの確定判決に後訴を拘束する効力はなく、本件仮処分に不法行為上の違法性は認められない。
実務上の射程
保全処分の執行後に本案で敗訴した場合や保全取消しがなされた場合、債権者は原則として過失の推定を受けるが、本判決は、前訴の取消判決の主文や判断が後訴(不法行為訴訟)を「法律上拘束するものではない」ことを明示した。答案上は、既判力の問題として整理しつつ、保全訴訟と不法行為訴訟の性質の違いを前提に、独自の違法性判断が可能である旨を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和47(オ)642 / 裁判年月日: 昭和48年3月27日 / 結論: 棄却
換地処分の違法を理由とする国家賠償請求訴訟において原告の主張する違法と、当該原告がすでに請求棄却の確定判決を受けた右換地処分取消請求訴訟で主張した違法とが、その内容において異なるものでないときは、右確定判決の既判力は、右国家賠償の請求に及ぶ。