認知の訴によらず母との親子関係を主張できる非嫡出の子は、母が死亡した後でも、検察官を相手方として、同女との間の親子関係の存在確認の訴を提起することができる。
母死亡後非嫡出の子の提起する親子関係存在確認の訴の許否
民法787条,民訴法225条,人事訴訟手続法2条3項
判旨
非嫡出子と母との間の親子関係は、母の認知を待たず分娩の事実によって当然に発生する。したがって、母の死後であっても、検察官を被告として親子関係存在確認の訴えを提起することが可能である。
問題の所在(論点)
母の認知を経ていない非嫡出子が、母の死後に、検察官を被告として母子間の親子関係存在確認の訴えを提起することができるか。母子関係の発生原因と死後の訴えの許容性が問題となる。
規範
非嫡出子とその母との間の親子関係は、認知を待たず、母の分娩という客観的事実によって当然に発生する。また、親子関係が存する以上、母が死亡した後であっても、検察官を相手方として、死後の親子関係存在確認の訴えを提起することができる。
重要事実
非嫡出子である被上告人が、母である亡Dとの間の親子関係について、Dの死後に検察官を被告として親子関係存在確認の訴えを提起した。上告人は、認知を経ていない場合に死後の確認の訴えが認められるか否かを争った。
事件番号: 昭和35(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。
あてはめ
母子関係は分娩の事実によって当然に成立するため、父子関係における認知のような創設的届出は不要である。したがって、認知を経ずとも親子関係は既に存在しているといえる。また、身分関係の公証という必要性に鑑みれば、母が死亡した場合でも、検察官を相手方とすることで、事後の法的身分の確定を求める訴えの利益が認められると解される。
結論
被上告人は、亡Dの認知を待たずに親子関係を主張でき、Dの死亡後は検察官を相手方として親子関係存在確認の訴えを提起できる。
実務上の射程
母子関係が分娩によって当然に生じるという原則(昭和37年判決)を前提に、死後の親子関係確認の訴え(人事訴訟法2条2号、12条等)の被告適格を認める射程を有する。父子関係と異なり、認知が前提とならない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和43(オ)179 / 裁判年月日: 昭和45年7月15日 / 結論: 破棄差戻
父母の両者または子のいずれか一方が死亡した後でも、生存する一方は、検察官を相手方として、死亡した一方との間の親子関係の存否確認の訴を提起することができる。
事件番号: 昭和28(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和34年5月12日 / 結論: 棄却
戸籍上親子と記載されている者の双方が死亡した後に、その親子関係不存在の確認を求める訴は許されない。
事件番号: 平成8(オ)380 / 裁判年月日: 平成12年3月14日 / 結論: 破棄自判
夫と妻との婚姻関係が終了してその家庭が崩壊しているとの事情が存在することの一事をもって、夫が、民法七七二条により嫡出の推定を受ける子に対して、親子関係不存在確認の訴えを提起することは許されない。