父母の両者または子のいずれか一方が死亡した後でも、生存する一方は、検察官を相手方として、死亡した一方との間の親子関係の存否確認の訴を提起することができる。
父母の両者または子のいずれか一方の死亡後における親子関係存否確認の訴の許否
民訴法225条,人事訴訟手続法2条3項
判旨
父母の一方または子が死亡した後であっても、生存する他方から死亡した者との間の親子関係存否確認の訴えを提起できる。この場合、人事訴訟手続法(当時)の規定を類推適用し、検察官を被告とすべきである。
問題の所在(論点)
当事者の一方が死亡した後に、過去の法律関係となった親子関係の存否確認を求める訴えに「確認の利益」が認められるか。また、その場合に検察官を被告として訴えを提起することが許されるか。
規範
過去の法律関係であっても、それによって生じた法律効果につき現在法律上の紛争が存在し、その解決のために当該法律関係の確認を求めることが必要かつ適切である場合には、確認の利益が認められる。身分関係は生存する当事者にとって法律関係の基本であり、戸籍の記載を真実の身分関係に合致させる利益も認められるため、相手方の死亡後であっても人事訴訟手続法(現行人事訴訟法)の関係規定を類推適用し、検察官を被告とする確認の訴えが許容される。
重要事実
上告人(母)は、戸籍上は他人の嫡出子として記載されているが、実際には自己と訴外Gとの間に生まれた子であるDとの間の母子関係の存在確認を求めた。しかし、子Dは訴えの提起前(昭和19年)に既に戦死していた。第一審および原審は、死亡した者との親子関係は「過去の法律関係」の確認にすぎず、確認の利益を欠くとともに、検察官を被告とする法的根拠もないとして訴えを却下したため、上告人が上告した。
あてはめ
親子関係は、当事者の一方が死亡した後でも、生存する当事者にとって身分関係の基本となる法律関係である。本件では、戸籍上の記載が真実と異なっており、戸籍法に基づき記載を訂正して真実の身分関係を明らかにする利益が存する。このような場合、身分関係の解決という趣旨に鑑み、婚姻無効や認知の訴え等において相手方死亡後の提訴を認める人事訴訟手続法の規定を類推適用するのが相当である。したがって、過去の法律関係であることをもって直ちに確認の利益を否定することはできず、検察官を相手方とする提訴も認められるべきである。
結論
死亡した子との間の母子関係存否確認の訴えは適法であり、検察官を被告として提起できる。したがって、訴えを不適法とした原判決は破棄される。
実務上の射程
人事訴訟において「過去の法律関係」の確認が広く認められる端緒となった重要判例である。答案上は、確認の利益の一般論(必要性・適切性)を論じた上で、特に身分関係の公証(戸籍訂正)の必要性を強調し、人事訴訟法12条の類推適用(現在は同条3項等に明文化)の根拠として用いる。
事件番号: 昭和46(オ)1130 / 裁判年月日: 昭和47年4月6日 / 結論: 棄却
(積極) 反対意見がある。
事件番号: 昭和40(オ)1489 / 裁判年月日: 昭和42年1月26日 / 結論: 破棄自判
子が戸籍上の母を被告として提起した父子関係存在確認の訴は、父の死亡後であつても、不適法である。
事件番号: 昭和35(オ)1189 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
母と非嫡出子間の親子関係は、原則として、母の認知をまたず、分娩の事実により当然発生する。
事件番号: 昭和28(オ)1397 / 裁判年月日: 昭和34年5月12日 / 結論: 棄却
戸籍上親子と記載されている者の双方が死亡した後に、その親子関係不存在の確認を求める訴は許されない。