一、恩給裁定についての審査請求が法定の期間経過後になされた不適法なものである場合には、たとえこれに対し実体審理のうえ棄却の裁決がなされても、右裁決は、恩給法一五条ノ二所定の「審査請求ニ対スル裁決」にあたらない。 二、行政庁が異議決定書に記載すべき審査請求期間の教示を怠つた場合にも、審査請求期間の進行が妨げられるものと解すべきではない。
一、恩給法一五条ノ二所定の「審査請求ニ対スル裁決」の意義 二、異議決定書に記載すべき審査請求期間の教示の懈怠と審査請求期間の進行
恩給法15条ノ2,行政不服審査法14条1項,行政不服審査法47条5項
判旨
不適法な不服申立てに対し実体審理を経て棄却裁決がなされたとしても、それは審査請求を経たことにはならず、また教示を怠っても不服申立期間の進行は妨げられない。
問題の所在(論点)
1. 不適法な審査請求に対してなされた棄却裁決は、審査請求前置主義の要件を充たすか。 2. 教示の欠缺は審査請求期間の進行を止める法的根拠となるか。 3. 「やむをえない理由」による期間徒過の救済の限界はどこか。
規範
1. 審査請求が法定期間経過後になされた不適法なものである場合、たとえ実体審理のうえ棄却裁決がなされたとしても、審査請求前置主義における「審査請求に対する裁決」を経たものとは認められない。 2. 行政庁が決定書等に記載すべき審査請求期間の教示を怠ったとしても、それによって審査請求期間の進行が妨げられるものではない。 3. 法定期間徒過に「やむをえない理由」がある場合であっても、正当な期間を知った後、さらに合理的な期間(行政不服審査法上の個別規定等)を経過したときは、当該申立てを適法と解することはできない。
重要事実
上告人は、恩給裁定に関する異議決定に対し審査請求を行ったが、その期間は法定の6か月を経過していた。異議決定書には審査請求期間の教示が欠落していたが、上告人は後に正当な期間(6か月)を知った。しかし、それを知った日からさらに数日(約9日)経過した後にようやく審査請求に及んだ。これに対し裁決庁は不適法却下ではなく実体審理の上で棄却裁決を行った。その後、上告人は裁定の取消訴訟を提起したが、前置義務の不履行を理由に訴えの適法性が争われた。
事件番号: 昭和59(行ツ)286 / 裁判年月日: 昭和61年4月25日 / 結論: 破棄自判
特許法四八条の三第一項所定の出願審査請求の期間につき民訴法一五九条一項の規定を準用ないし類推適用する余地はない。
あてはめ
1. 本件審査請求は法定の6か月を経過しており、本来却下されるべき不適法なものである。実体審理がなされたという形式的事実があっても、適法な審査請求を経たことにはならないため、前置要件を充たさず取消訴訟は不適法である。 2. 教示の懈怠があっても、法律上の根拠がない限り期間の進行は停止しない。したがって、教示がないことのみをもって期間徒過を正当化することはできない。 3. 仮に教示欠缺を「やむをえない理由」とする余地があるとしても、上告人は昭和39年8月23日に正当な期間を知り得たのであるから、その後に速やかに申し立てるべきであった。同年9月1日の申立ては、知った後さらに期間を徒過しており、適法とは認められない。
結論
本件審査請求は不適法であり、それに対する棄却裁決は審査請求前置の要件を満たさないため、本件裁定取消しの訴えは却下されるべきである。
実務上の射程
行政事件訴訟における審査請求前置(行訴法8条1項但書等)の解釈として重要。裁決庁が誤って実体裁決をしたとしても、裁判所は独自に審査請求の適法性を職権調査し、前置要件の充足性を判断する。また、教示制度の不備が直ちに期間進行を止めるものではないとする実務慣行の根拠となる。
事件番号: 昭和43(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 破棄差戻
一、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益は失われない。 二、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過して…
事件番号: 昭和44(行ツ)68 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: その他
国税に関する処分に対する異議申立てを棄却した決定に対しては、異議決定固有の瑕疵を理由としてその取消訴訟を提起することができる。
事件番号: 昭和28(オ)251 / 裁判年月日: 昭和30年1月28日 / 結論: 破棄自判
保険給付に関する決定および保険審査官のした審査決定についての、労働者災害補償保険審査会に対する審査請求が不適法として却下された場合は、右却下決定が正当である以上、右保険給付に関する決定および保険審査官の決定の取消を求める訴は不適法である。