強制競売における競落許可決定およびその抗告審の決定をなすにつき、口頭弁論または当事者の審尋を経ないでも、憲法三二条、八二条の規定に違反するものではない。
強制競売における競落許可決定およびその抗告審の決定をなすにつき口頭弁論または当事者の審尋を経ることの要否と憲法三二条八二条
民訴法677条,民訴法680条,民訴法419条,憲法32条,憲法82条
判旨
憲法82条が公開対審を要求する「裁判」とは、実体的権利義務の存否を終局的に確定する純然たる訴訟事件を指し、強制競売における売却許可決定(旧法の競落許可決定)はその対象に含まれない。
問題の所在(論点)
強制競売における売却許可決定(競落許可決定)およびその抗告審の決定は、憲法82条が対審および判決の公開を義務付ける「裁判」に該当するか。また、口頭弁論等を経ない手続が憲法32条、82条に違反するか。
規範
憲法82条にいう「裁判」とは、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し、当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判を指す。したがって、実体的権利義務を終局的に確定するものではない手続については、口頭弁論または当事者の審尋を経ないで審理・裁判したとしても同条に違反しない。
重要事実
強制競売手続において、裁判所が競落許可決定(現行法上の売却許可決定)を下し、それに対する抗告審の決定が行われた。抗告人は、原審が口頭弁論または当事者の審尋を経ないで審理・裁判したことは、憲法32条(裁判を受ける権利)および憲法82条(裁判の公開)に違反すると主張して特別抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和42(ク)341 / 裁判年月日: 昭和42年11月14日 / 結論: 棄却
不動産競売事件の競落許可決定に対する即時抗告事件について、公開の法廷における口頭弁論にもとづかないで抗告を棄却する旨の決定をしても、憲法第八二条に違反しない。
あてはめ
憲法32条は裁判を受ける権利を規定したものであり、審理の方法を直接規定するものではない。また、憲法82条の対象となる「純然たる訴訟事件」とは、実体的権利義務を終局的に確定するものを指す。本件における強制競売の許可決定は、債務名義に表示された請求権の存否を終局的に確定するものではない。したがって、非公開の審理や、口頭弁論・審尋を欠く手続であっても、同条の要請する「裁判」の公開原則には抵触しないといえる。
結論
強制競売における許可決定およびその抗告審の決定は、憲法82条にいう裁判には当たらず、口頭弁論等を経ない審理も憲法32条、82条に違反しない。
実務上の射程
憲法上の「裁判の公開」の射程を画定する重要判例である。民事執行手続や非訟事件など、権利義務を終局的に確定しない手続において、審問等の手続的保障がどの程度憲法上要求されるかを論じる際の基準となる。答案では、純然たる訴訟事件と非訟・執行事件を区別する際の規範として引用する。
事件番号: 昭和36(ク)63 / 裁判年月日: 昭和36年3月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権実行のための不動産競売手続は非訟事件であり、その裁判は憲法82条が定める公開法廷における対審及び判決を必ずしも必要としない。 第1 事案の概要:抗告人が、抵当権実行としての不動産競売手続における競落許可決定に対し即時抗告を申し立てた。抗告人は、当該即時抗告事件の審理裁判が口頭弁論(公開の法廷…
事件番号: 昭和51(ク)109 / 裁判年月日: 昭和52年1月27日 / 結論: 却下
競売の利害関係人が外国に在るときは同人に対して競売期日の通知を要しないとした競売法二七条三項により生ずる利害関係人の不利益は憲法三二条の裁判を受ける権利とは関係がない。
事件番号: 昭和52(ク)331 / 裁判年月日: 昭和52年11月14日 / 結論: 却下
競売法二七条四項は任意競売手続における利害関係人の範囲を定めた規定であつて、憲法三二条所定の裁判を受ける権利があるかどうかとはなんら関係がない。
事件番号: 昭和37(ク)289 / 裁判年月日: 昭和37年11月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】抵当権実行のための不動産競売手続は非訟事件であり、その裁判に際して公開の法廷における対審や判決の手続を経ることは憲法上要求されない。したがって、競落許可決定に対する抗告審において口頭弁論を経ずに審理・裁判を行うことは合憲である。 第1 事案の概要:抵当権の実行として行われた不動産競売手続において、…