山林の買入を委託し、その買入代金に当てるための資金を手交した経緯に関し、判示のような事情がある場合には、右金員の交付を単なる貸金であるとして、買入委託契約の成立を否定することは、経験則に反し、許されない。
山林の買入委託契約の認定につき経験則違背の違法があるとされた事例
民訴法394条,民訴法185条
判旨
買入委託に基づき受託者名義で不動産を買い受け、将来委託者に名義を移転する合意があったと推認される場合には、代金相当額の交付を単なる貸付金と認定することは経験則に反する。事実関係の前後関係や当事者の属性、交付後の言動を総合し、名義借りの合意の有無を判断すべきである。
問題の所在(論点)
上告人と被上告人の間の金銭授受の法的性質が、単なる「消費貸借契約(貸付金)」か、それとも「買入委託に伴う名義借りの合意」に基づくものか。これに伴い、上告人の被上告人に対する所有権移転登記請求が認められるか。
規範
不動産の買受代金として授受された金員の性質を判断するにあたっては、単に「借用証」等の書面の存否のみならず、交付に至る経緯、当事者の資産状況や職業的属性、買受直後の登記移転準備の有無、および名義移転に関する合意の有無を総合的に考慮し、経験則に照らして判断すべきである。
重要事実
上告人は、被上告人に対し山林の買入を委託し、代金相当額(63万円超)を交付した。被上告人は自己名義で山林を買い受けたが、その後上告人から名義移転を求められると、本件金員は借用金であると主張し借用証を作成した。一方、上告人は当初から所有権取得の意思を有し、売買直後に司法書士へ移転登記書類の作成を依頼していた。また、上告人家は広大な山林を所有し被上告人に伐採を依頼する関係にあったのに対し、被上告人は自有山林を持たない農業者であった。
事件番号: 昭和38(オ)806 / 裁判年月日: 昭和39年7月7日 / 結論: 棄却
金銭の消費貸借にあたり、貸主が借主に対し金銭交付の方法として約束手形を振り出した場合において、右約束手形が満期に全額支払われたときは、たとえ借主が右約束手形を他で割り引き、手形金額にみたない金員を入手したのにとどまつても、右手形金額相当額について消費貸借が成立する。
あてはめ
被上告人が作成した借用証は、上告人側からの再三の移転登記催告に対し、拒絶の口実として後付けで作成された経緯があり、金員の性質を決定する資料として不十分である。むしろ、①上告人が当初から取得意思を持ち直後に登記準備をしていること、②売買代金に加えて仲介手数料や謝礼金の授受が予定されていたこと、③大規模所有者である上告人と、山林所有経験のない被上告人という属性の差を考慮すれば、本件は貸付ではなく「名義を一時的に借り、後に移転する」合意があったと推認するのが経験則に合致する。
結論
本件金員の交付は単なる貸金とは認められず、名義移転の合意があったと推認すべきである。したがって、上告人の請求を棄却した原判決には採証法則違背および審理不尽の違法があり、破棄・差し戻しを免れない。
実務上の射程
民事訴訟における事実認定(経験則)のあり方を示す。特に、不動産の他名義買い(名義信託的合意)の成否が争われる場面で、書面の形式的な記載よりも、資金の出所、取得の動機、当事者の社会的・経済的関係といった間接事実を重視して合意を認定する際の指針となる。
事件番号: 昭和42(オ)576 / 裁判年月日: 昭和43年11月19日 / 結論: 棄却
一、宗教法人が、宗教法人法第二四条本文に掲げる財産を処分するに当たつてした同法第二三条の公告が、その時期、期間などの点において、同条および右宗教法人の規則の定と相違する場合に、当該行為の効力を判断するに当たつては、公告によつて行為の要旨を信者その他の利害関係人に周知させ、不当な処分を防止しようとする同法の趣旨が維持され…
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…
事件番号: 昭和33(オ)718 / 裁判年月日: 昭和36年5月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない契約条件(代金決済方法等)を認定して売買契約の効力を認めることは、当事者の主張・立証の範囲内であれば弁論主義に反しない。また、特定の買戻し合意や代金決済合意を含む売買契約であっても、直ちに公序良俗に反して無効となるものではない。 第1 事案の概要:被上告人(原告)は上告人(被…
事件番号: 昭和36(オ)1026 / 裁判年月日: 昭和37年4月27日 / 結論: 棄却
上告理由として原審に提出した準備書面を引用するというだけの部分は、適式な上告理由書とならない。(昭和二八年一一月一一日大法廷判決、民集七巻一一号一一九三頁参照)