金銭の消費貸借にあたり、貸主が借主に対し金銭交付の方法として約束手形を振り出した場合において、右約束手形が満期に全額支払われたときは、たとえ借主が右約束手形を他で割り引き、手形金額にみたない金員を入手したのにとどまつても、右手形金額相当額について消費貸借が成立する。
金銭貸与の方法として手形を交付した場合と消費貸借の成立する金額。
民法587条
判旨
金銭消費貸借契約において、金銭の直接交付に代えて手形や小切手を交付した場合であっても、それらが決済されれば、その全額について金銭消費貸借の成立を認めることができる。
問題の所在(論点)
金銭消費貸借契約(民法587条)において、現金の直接交付に代えて手形・小切手を交付し、後にそれらが決済された場合、その額面通りの金銭消費貸借が成立するか。
規範
民法587条に規定する金銭の「受領」は、必ずしも現金の直接交付に限られない。貸主が借主に対し、金銭の支払に代えて小切手や約束手形を交付し、それらが実際に決済された場合には、その決済額をもって金銭の授受があったものと解され、消費貸借契約が有効に成立する。
重要事実
貸主(被上告人)は借主(上告人A)との間で30万円の消費貸借契約を締結する際、現金そのものではなく、10万円の小切手1通および各10万円の約束手形2通を交付した。その後、小切手は間もなく支払われ、2通の約束手形も満期にそれぞれ支払われた。しかし、借主側は実際に現金として入手した額が30万円に満たない(26万8000円に止まる)と主張し、30万円全額についての消費貸借の成立を争った。
事件番号: 昭和46(オ)86 / 裁判年月日: 昭和46年11月19日 / 結論: 破棄差戻
山林の買入を委託し、その買入代金に当てるための資金を手交した経緯に関し、判示のような事情がある場合には、右金員の交付を単なる貸金であるとして、買入委託契約の成立を否定することは、経験則に反し、許されない。
あてはめ
本件において、被上告人が交付した10万円の小切手および合計20万円の約束手形は、その後にすべて支払が完了(決済)されている。消費貸借における要物性の充足は、最終的に金銭の授受と同一の経済的利益が移転したか否かにより判断されるべきところ、手形・小切手が決済された以上、その額面合計額である30万円について金銭の授受があったと同視できる。したがって、入手した現金が一部不足する旨の主張があっても、決済事実に基づき30万円全額の成立を肯定すべきである。
結論
小切手および約束手形が満期に支払われた以上、合計30万円の金銭消費貸借の成立を認めた原審の判断は正当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
要物契約における「目的物の授受」を柔軟に解釈する実務上の指針となる。現代的な取引における銀行振込や手形・小切手による貸付が、決済を条件として要物性を充足することを明確にした事案である。答案上は、民法587条の「受領」の意義を検討する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和38(オ)1396 / 裁判年月日: 昭和39年7月16日 / 結論: 棄却
原審確定の事実関係のもとでは、約束手形を延滞賃料の支払として譲渡すべく提供したことが、金銭債務の履行として債務の本旨に従った弁済の提供があったものとは解せられない。
事件番号: 昭和35(オ)406 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
証人らが訴訟当事者の一方の妻あるいは妻の兄の関係にあるとしても、その一事によつて右証人らが証人能力を有しないとか、証言の証拠価値が薄弱であるとかは断定できない。
事件番号: 昭和36(オ)708 / 裁判年月日: 昭和39年2月20日 / 結論: 棄却
一 訴状において停止条件附代物弁済契約の条件成就による所有権取得の効果の主張のみが記載されている場合においても、原告がその後の弁論において、代物弁済の予約の主張を追加してその予約の完結権行使が訴状の送達をもつてされた旨主張したときには、その訴状送達の時に右予約完結権の行使があつたものと認めることができる。 二 貸金担保…
事件番号: 昭和35(オ)1179 / 裁判年月日: 昭和37年12月4日 / 結論: 棄却
利息制限法の制限をこえる利息を目的として準消費貸借をした場合、該契約は制限をこえる部分について無効である。