土地の賃借人およびその経営する会社が他に営業の場所を有するに至つたときまたは爾後の営業の準備に通常要する期間を経過したときをもつて明渡期限と定めて、土地賃貸借が合意解約された場合において、賃貸人に対し賃借人がその所有の他の土地建物を買い受けてもらう必要から、判示のような経過で解約を承諾したものであるときは、右合意につき、賃借人が真実解約の意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、他に右合意を不当とする事情は認められないものというべきであつて、右期限付合意解約は借地法一一条に該当しない。
土地賃貸借の期限付合意解約が借地法一一条に該当しないとされた事例
借地法11条
判旨
借地人による土地賃貸借の期限付合意解約は、借地人が真実解約の意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、合意を不当とする事情がなければ、借地法11条(強行規定)に反せず有効である。
問題の所在(論点)
借地法11条(強行規定)が禁止する「借地権者に不利な特約」に、将来の明渡期限を定める合意解約が含まれるか。特に、借地人の真実の意思に基づく合意の有効性が問題となる。
規範
将来の一定の時期に賃貸借を終了させる期限付合意解約が、借地法11条(現借地借家法9条)に抵触し無効となるかが問題となる。判例は、借地人が真実解約の意思を有していると認めるに足りる合理的客観的理由があり、かつ当該合意を不当とする事情が認められない場合には、同条に該当せず有効であると解する。
重要事実
賃借人(上告人)は、所有する土地建物を処分する必要が生じ、賃貸人(被上告人)が経営する会社との間で売買契約を締結しようとした。その際、賃貸人は買受けの条件として本件土地の明渡しを要求した。双方は弁護士を代理人として交渉を重ねた結果、賃借人が要求に応じ、他での営業場所の確保や準備に通常要する期間が経過した時を期限とする期限付合意解約が成立した。その後、賃貸人が明渡しを求めたが、賃借人は当該合意が借地法11条に反し無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和48(オ)766 / 裁判年月日: 昭和49年4月26日 / 結論: 棄却
土地賃貸借が合意解除された当時、地上建物につき土地賃借人と合資会社との間に賃貸借が締結されていた場合においても、右会社は土地賃借人が従前同建物で経営していた事業を自己が代表者となつて会社組織にしたものにすぎず、かつ、右解除の際、土地賃借人が会社設立について言及しなかつたため土地賃貸人が右の事実を全く知らなかつたなど判示…
あてはめ
本件では、賃借人自らが土地建物の処分のために賃貸人と交渉しており、賃貸人による買受けの条件として明渡しを受け入れたという経緯がある。この交渉は双方弁護士を代理人として慎重に行われており、賃借人が真実解約の意思を有していたと認めるに足りる「合理的客観的理由」が存する。また、営業準備期間を考慮した期限設定がなされている点からも、借地人に一方的に不利な「不当とする事情」は認められない。したがって、本件合意は借地法11条の趣旨を没却するものとはいえない。
結論
本件期限付合意解約は有効であり、賃貸人による土地明渡請求は認められる。上告棄却。
実務上の射程
借地法(現借地借家法)の強行規定性は、借地人の保護を目的とするが、借地人の自由な意思に基づく合理的な合意までも一律に無効とするものではない。「合理的客観的理由」の有無を判断する際は、交渉に弁護士が介在しているか、合意に至る動機が借地人の利益にも適うかといった事実を摘示することが重要である。
事件番号: 昭和59(オ)147 / 裁判年月日: 昭和63年9月8日 / 結論: 破棄差戻
土地賃借権の譲渡契約において、譲渡について地主の承諾が得られなかつたときは、譲渡契約当事者間で協議し、円満に取引を完了する旨の特約がある場合に、譲渡の効力発生について地主の承諾を停止条件とする旨を直接定めた書面上の合意がなく、土地上の建物の売買代金を含む譲渡代金の四割相当の手付金が譲渡契約時に支払われ、譲受人が契約締結…
事件番号: 昭和36(オ)696 / 裁判年月日: 昭和37年3月23日 / 結論: 棄却
賃貸借の対象たる土地に対し、土地区画整理法に基づき換地予定地の指定がなされた結果、賃借人が従前の土地の使用収益を禁じられ、換地予定地の使用収益すべきことになつたとしても、これによつて従前の土地の賃貸借そのものが消滅に帰したわけではなく、その約定賃料もまた換地予定地の地積いかんにより当然増減するものではない。
事件番号: 昭和35(オ)946 / 裁判年月日: 昭和37年6月26日 / 結論: 棄却
借地人の債務不履行により土地賃貸借契約が解除された場合には、借地人は借地法第四条第二項の規定による地上建物の買取請求権を有しない。(昭和三五年二月九日第三小法廷判決、民集一四巻一〇八頁参照)
事件番号: 昭和45(オ)631 / 裁判年月日: 昭和47年3月7日 / 結論: 棄却
土地の賃貸人と賃借人との間において土地賃貸借契約が合意解約されたが、一方、土地の賃借人が同地上に所有する建物に設定した根抵当権が実行され、右建物が競落された場合において、右合意解約の原因がもつぱら賃借人の賃料不払にあり、また、右競落は、合意解約により右土地の賃借権が消滅したのちであつて、競落人は右賃借権消滅の事実を知悉…