取締役会に出席した取締役のうちに決議につき特別の利害関係を有する者があるため、一人の取締役のみが議決権を行使しうる場合であつても、その一人の取締役によつて有効な決議をすることができる。
取締役会の出席取締役中に特別利害関係を有する者があるため一人の取締役のみが議決権を行使しうる場合における決議の成否
商法260条ノ2
判旨
取締役会設置会社において、特定の取締役が特別の利害関係を有するために議決権を行使できない場合であっても、他の議決権を行使し得る取締役が一人であれ、その者によってなされた決議は有効である。
問題の所在(論点)
取締役会設置会社における利益相反取引の承認決議等において、特別の利害関係を有する取締役を除外した結果、議決権を行使し得る取締役が一人となった場合、当該一名のみによる決議は有効か。
規範
取締役会の決議において、一部の取締役が特別の利害関係を有するために議決権を行使できない場合であっても、議決権を行使し得る他の取締役が存在すれば、その者のみによって有効な取締役会決議をなし得る。
重要事実
D製造株式会社(訴外)の取締役であった被上告人ら二名は、同社から本件土地を含む宅地を買い受けた。この取引に際し、同社の取締役会が開かれたが、出席した取締役三名のうち二名(被上告人ら)は、当該取引につき特別の利害関係を有する者であった。そのため、議決権を行使し得る取締役は残る一名のみという状況であったが、当該一名によって承認決議がなされた。上告人側は、このような状況下での決議は無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和57(オ)1392 / 裁判年月日: 昭和60年11月29日 / 結論: 棄却
一 水産業協同組合法四五条の準用する民法五四条にいう「善意」とは、理事の代表権に制限を加える定款の規定又は総会の決議の存在を知らないことをいうと解すべきである。 二 水産業協同組合法四五条の準用する民法五四条の「善意」の主張・立証責任は第三者にあるものと解すべきである。 三 第三者が水産業協同組合法四五条の準用する民法…
あてはめ
本件において、取締役会に出席した三名のうち、取引の当事者である被上告人ら二名は特別の利害関係を有する。会社法(当時の商法)の趣旨に照らせば、特別利害関係人は適正な決議を阻害するおそれがあるため除外されるべきであるが、その結果として議決権を行使できる者が一人になったとしても、その一人が取締役会の権限を適正に行使することを妨げる理由はない。したがって、残る一名の取締役によってなされた本件土地売買の承認決議は、有効な取締役会決議として認められる。
結論
特別の利害関係を有する取締役を除いた結果、議決権を行使できる取締役が一人となった場合でも、その一名による決議は有効である。
実務上の射程
会社法369条2項の「特別の利害関係を有する取締役」の解釈に関する重要判例である。定足数の算定において特別利害関係人を除外した結果、残った取締役が極端に少人数(一人)となった場合でも、決議が成立し得ることを示している。答案上は、利益相反取引(356条1項2号、365条1項)の承認決議の有効性を論じる際、定足数・決議要件の充足性を基礎付ける論拠として使用する。
事件番号: 昭和35(オ)1321 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続財産の特別代理人によって選任された訴訟代理人は、当該相続財産の訴訟代理人であり復代理人ではない。また、特別代理人の代理権は、相続財産管理人の選任等により当然に消滅するのではなく、裁判所の解任によって消滅する。 第1 事案の概要:上告人は亡Dの相続財産に対して本訴を提起した。一審判決では当事者表…
事件番号: 昭和43(オ)335 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 棄却
会社と取締役間に商法二六五条所定の取引がなされる場合でも、右取締役が会社の全株式を所有し、会社の営業が実質上右取締役の個人経営のものにすぎないときは、右取引によつて両者の間に実質的に利害相反する関係を生ずるものでなく、右取引については、同条所定の取締役会の承認を必要としない。
事件番号: 昭和31(オ)1070 / 裁判年月日: 昭和32年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利能力なき社団の代表者が、社団のために自己の名において締結した契約の効果は、当該社団の構成員全員に帰属する。 第1 事案の概要:被上告人は、権利能力なき社団である「懇話会」の代表者であり、同会の活動に関連して上告人との間で売買契約を締結した。この際、被上告人は同会の会員全員のために、自己の名にお…
事件番号: 昭和33(オ)517 / 裁判年月日: 昭和36年12月15日 / 結論: 棄却
不動産の買主が、その売主の相続人に対し、売買を原因として、当該不動産について所有権移転登記を求める訴訟は、その相続人が数人いるときでも、必要的共同訴訟ではない。