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建物の一部の賃貸借が借家法一条ノ二及び二条の適用される建物の賃貸借にあたらないとされた事例
借家法1条ノ2,借家法2条
判旨
賃貸借の目的物が建物の一部である場合において、当該部分が構造上および利用上の独立性を欠き、独立した建物としての実体を備えていないときは、旧借家法1条の2および2条にいう「建物」には当たらない。
問題の所在(論点)
建物の一部を目的とする賃貸借において、当該賃借部分が旧借家法1条の2および2条に規定される「建物」に該当し、同法の保護(更新拒絶の制限等)を受けるための要件が問題となる。
規範
借地借家法(旧借家法)の適用対象となる「建物」とは、屋根、周壁、天井等によって外気から遮断され、独立した排他的支配が可能な構造・規模を有する建築物を指す。建物の一部を目的とする賃貸借において、その部分が独立した建物としての実体を備えているか否かは、障壁による区画の明確性、出入口の有無といった構造上の独立性と、当該部分のみで特定の用途に供し得るかという利用上の独立性を総合して判断すべきである。
重要事実
上告人は、本件建物の一部を賃借していたが、当該賃借部分は他の部分との境界が明確な隔壁等で固定的に遮断されておらず、また、当該部分のみで独立した排他的な占有・利用が困難な状態にあった。原審は、このような物理的状況に鑑み、当該賃借部分が独立した建物としての性格を欠くと認定した。これに対し、上告人は当該部分が借家法上の建物に該当すると主張して上告した。
あてはめ
本件賃借部分は、構造上の独立性が乏しく、周囲の空間から物理的に明確に遮断されているとは言い難い。また、利用の側面においても、本件建物全体から切り離して独立した経済的・生活的な単位として機能しているとは認められない。したがって、当該部分は独立した建物としての実体を備えておらず、建物の一部としての排他的支配を認めるに足りる客観的状態にないといえる。ゆえに、借家法が適用されるべき「建物」の概念を充足しないと解するのが相当である。
結論
本件賃借部分は、旧借家法にいう「建物」には当たらない。したがって、同法の適用を前提とする上告人の主張は認められず、上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
建物賃貸借の存否が争われる事案、特にビル内の一画やデパートの売り場、オープン形式の店舗等の法的属性を判断する際の指標となる。現代の借地借家法下においても、1条の「建物」の意義を解釈する上での基準(構造上の独立性・利用上の独立性)として機能する。
事件番号: 昭和41(オ)1426 / 裁判年月日: 昭和42年6月2日 / 結論: 棄却
建物の一部であつても、障壁等によつて他の部分と区画され、独占的排他的支配が可能な構造・規模を有するものは、借家法第一条にいう「建物」にあたる。