建物賃借人が、第三者との間の飲食店営業共同経営契約(調理販売は右第三者が担当し、賃借人は場所、什器等を提供して売上高の百分の五を取得する約旨)に基き、自己と対等の立場において前記建物の一部を右第三者に使用させているときは、かかる使用関係の設定につき賃貸人の承諾がないかぎり、民法第六一二条第二項による解除の原因となる。
建物賃借人が賃貸人に無断で建物の一部を営業共同経営契約に基き第三者に使用させる場合と民法第六一二条
民法612条(667条)
判旨
賃借人が第三者と共同経営の契約を締結し、当該第三者が対等の立場で建物を使用している場合、民法612条2項の「第三者をして賃借物の使用を為さしめたるとき」に該当する。占有者が賃借人の占有補助者等としての従属的関係にない限り、無断使用・転貸としての規律を受ける。
問題の所在(論点)
賃借人が第三者と共同経営契約を結び、その契約に基づいて当該第三者に建物を使用させた場合、民法612条2項にいう「第三者をして賃借物の使用を為さしめたるとき」に該当するか。特に、占有補助者としての使用に留まるか、独立した第三者による使用といえるかが問題となる。
規範
民法612条にいう「第三者をして賃借物の使用を為さしめたるとき」とは、賃借人が賃貸人の承諾を得ることなく、賃借人以外の者に賃借物を独立して占有・使用させることを指す。占有者が賃借人の使用人や占有補助機関として従属的な関係に止まる場合はこれに含まれないが、共同経営等の契約に基づき対等の立場や主導的な立場で占有使用する場合は、同条の制限に抵触する。
重要事実
賃借人である被上告会社は、本件建物の1階で喫茶店を経営していたが、その経営を廃止し、第三者Dと共同で飲食店を経営する契約を締結した。この契約の内容は、Dが調理販売を担当し、会社は場所と什器設備を提供するとともに会計に関与し、売上高の5%を取得するというものであった。Dは会社に対する従属的関係になく、対等の立場で建物を占有使用していたが、賃貸人(上告人)の承諾は得ていなかった。
あてはめ
本件におけるDは、共同経営契約に基づき調理販売という飲食店経営の本体業務を担当しており、場所の占有使用はむしろ主としてDの担当圏内にある。会社側は場所の提供や会計への関与に止まっており、Dは会社の使用人や占有補助者といった従属的関係にあるとは認められない。したがって、Dは会社と対等の立場にある共同経営者の一人として建物を占有使用しているものであり、これを「被上告会社の権限の範囲内」での占有に過ぎないとした原審の判断は不当である。
結論
Dによる本件建物の占有使用は、民法612条2項所定の「第三者をして賃借物の使用を為さしめたるとき」に該当する。賃貸人の承諾なき無断使用にあたるため、解除の効力等を判断するため差し戻されるべきである。
実務上の射程
共同経営の名目であっても、実態として第三者が独立した占有権限を行使している場合には無断転貸(または無断譲渡)となり得ることを示す。答案では、単なる履行補助者・占有補助者としての利用か、独立した主体としての利用かを、業務分担や支配の態様から認定する際の指針となる。
事件番号: 昭和27(オ)1274 / 裁判年月日: 昭和29年11月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】賃借人が賃貸人の承諾なく第三者に賃借物を使用させた場合、民法612条1項の規定に反するものとして、賃貸人は同条2項に基づき無催告で賃貸借契約を解除することができる。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)との間の本件家屋の賃貸借契約に基づき当該家屋を使用していたが、賃貸人の承諾を…