一、甲がその所有の自動車を乙に貸与し、乙がその被用者に運転させて運行中事故を起こし、同乗していた乙の子丙が死亡した場合において、甲と乙とはかねてから親交があつて、相互に自動車の貸し借り、融通をしていた関係があり、右貸与の目的は休日のドライブという一時的なものであつたなど判示の事情があるときは、甲は、丙の被つた損害につき、自動車損害賠償保障法三条による運行供用者としての責任を負うべきである。 二、同一事故につき数人が自動車損害賠償保障法三条による運行供用者としての責任を負う場合には、各人の損害賠償債務は、相互に不真正連帯の関係に立ち、これにつき民法四三八条の規定の適用はないものと解すべきである。
一、自動車の借主の運行による事故につき貸主に自動車損害賠償保障法三条による運行供用者責任が認められた事例 二、数人が自動車損害賠償保障法三条による運行供用者責任を負う場合と民法四三八条の規定の適用の有無
自動車損害賠償保障法3条,民法432条,民法438条
判旨
不真正連帯債務の関係にある運行供用者の一方の債務が混同により消滅しても、他方の運行供用者の損害賠償債務には影響を及ぼさない。
問題の所在(論点)
共同運行供用者の一方に対する損害賠償債務が、相続による混同(民法520条)で消滅した場合、その効力は他の運行供用者に及ぶか(民法438条の準用の可否)。
規範
不真正連帯債務の債務者相互間には、同一損害の填補を目的とする限度以上の関連性はない。そのため、債権を満足させる事由以外は、債務者の一人について生じた事項は他の債務者に効力を及ぼさず、連帯債務に関する民法438条(混同)の規定は適用されない。
重要事実
事故車の所有者Dは、親交のあるE夫婦にドライブ目的で一時的に車両を貸与したが、いつでも返還を求め得る状況にあった。E夫婦は被用者Hに運転させ、子GおよびBを同乗させて走行中、Hの過失により事故が発生。Gが死亡しBが負傷した。BらはDの自賠法3条に基づく責任を前提に、保険会社(上告人)に対し同法16条1項に基づく直接請求を行った。上告人は、共同運行供用者であるE夫婦と被害者Bらとの間に相続による混同が生じたことで、Dの債務も消滅したと主張した。
あてはめ
DとE夫婦は、共に本件事故の運行供用者として損害賠償責任を負うが、この両者の責任は各自の立場において別個に生じ、不真正連帯債務の関係に立つ。不真正連帯債務においては、債権者を満足させる事由(弁済等)を除き、一人の債務者に生じた事由は相対的効力しか持たない。したがって、E夫婦と被害者Bとの間に相続等の事情により混同が生じ、E夫婦の債務が消滅したとしても、そのことは別個の債務であるDの賠償債務に何ら影響を及ぼすものではないと解される。
結論
E夫婦の債務が混同により消滅しても、他方の運行供用者であるDの債務には影響しない。したがって、Dの責任を前提とする保険会社への直接請求は認められる。
実務上の射程
共同不法行為者や共同運行供用者間の責任関係が不真正連帯債務であることを前提に、民法の連帯債務の絶対的効力(混同・更改・免除等)が否定される場面で活用する。特に被害者が加害者の相続人である場合の賠償請求の可否を論じる際に重要となる。
事件番号: 昭和49(オ)1035 / 裁判年月日: 昭和50年11月4日 / 結論: 破棄自判
会社の取締役が従業員の運転する会社所有の自動車に乗車中従業員の惹起した事故により受傷した場合において、右取締役が業務時間外にトルコ風呂に行くためみずからその自動車を運転して数時間にわたつて走行させたのち同乗の従業員に一時運転させて運行を継続中に事故が発生したものであるなど判示の事実関係があるときは、右取締役は、会社に対…