無断転貸を理由とする賃貸借契約解除の主張が賃借権無断譲渡を理由とする解除の趣旨をも含むと解して、これを認めても、弁論主義に反しない。
弁論主義違反がないとされた事例
民訴法186条
判旨
賃貸借契約において無断転貸を理由とする解除の主張には、特段の事情がない限り、同一の態様に基づく賃借権の無断譲渡を理由とする解除の趣旨も含まれると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
賃貸人が無断転貸を理由に解除を主張した場合に、その主張に無断譲渡による解除の趣旨が含まれるか。また、そのように解することが相手方に対する不意打ち(審理不尽・理由不備)に当たるか。
規範
民法612条が、無断転貸と無断譲渡のいずれであっても賃借人が第三者に使用収益させることを解除原因としている趣旨に鑑み、一方の解除原因の主張は、他方の解除原因の主張を内包するものと解すべきである。また、相手方が占有者として費用償還請求権等の防御手段を講じる機会が確保されている限り、不意打ちとはならない。
重要事実
賃貸人(被上告人)が、賃借人(原審控訴人D)から占有者(上告人)への無断転貸を理由として建物賃貸借契約の解除を主張した。しかし、実際の権利変動の態様は賃借権の無断譲渡に該当する可能性があった。占有者側は、無断転貸を理由とする解除の主張に基づき、民法196条による費用償還請求権を主張する機会を有していた。
あてはめ
民法612条は、第三者に使用収益させること自体を解除原因としており、転貸と譲渡は権利関係の形式こそ異なるが、解除原因としての実質は共通する。本件において、賃貸人が無断転貸による解除を主張した際、占有者は建物の占有者として費用償還請求権等の抗弁を提出する法的機会を十分に与えられていた。したがって、転貸による解除主張を譲渡による解除主張と読み替えても、手続上の不利益は生じない。
結論
無断転貸による解除の主張には、無断譲渡による解除の趣旨も含まれると解するのが正当であり、相手方に不意打ちを与えるものではないため、解除は有効である。
実務上の射程
訴訟物たる解除権の行使において、原因事実の評価(譲渡か転貸か)が曖昧な場合でも、民法612条違反という法的構成が同一であれば、賃貸人の主張を柔軟に解釈できることを示す。実務上は、念のため譲渡・転貸の両方を予備的に主張すべきだが、一方のみの主張でも他方を包含し得るとする本判例の射程は広い。
事件番号: 昭和29(オ)446 / 裁判年月日: 昭和31年7月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法612条2項に基づく解除権の行使には、解除時に信頼関係を裏切る程度の無断転貸が存在することを要するが、その判断にあたっては、転貸の外形のみならず、賃借人の従前の行為等の諸般の事情を勘案できる。 第1 事案の概要:賃借人A2は、本件家屋の賃料が月額253円であった当時、二階の一室を月額1000円…