商法二六六条一項五号には、取締役が同法二五四条三項、民法六四四条の定める注意義務に違反した場合も含まれる。
商法二六六条一項五号と同法二五四条三項、民法六四四条
商法266条1項5号,商法254条3項,民法644条
判旨
取締役がその任務を怠り、会社に損害を生じさせた場合には、会社に対しその損害を賠償する責任を負う。本件では、善管注意義務違反が認められるため、会社に対する損害賠償義務が肯定された。
問題の所在(論点)
取締役が会社に対して負担する善管注意義務(任務)を怠ったといえるか、また、その任務懈怠と会社に生じた損害との間に因果関係が認められるか。
規範
会社法330条が準用する民法644条に基づき、取締役は会社に対し善良な管理者の注意をもってその職務を執行する義務を負う。取締役がこの義務に違反して(任務懈怠)、その結果として会社に損害が生じた場合、取締役は会社法423条1項に基づき、会社に対して損害賠償責任を負う。判断に際しては、当時の事実関係に基づき、通常の取締役に求められる注意水準を逸脱したか否かが検討される。
重要事実
上告会社(被上告人)の取締役であった訴外Dは、その職務執行の過程において、特定の行為(具体的な行為態様は判決文からは不明)により被上告会社に1556万4852円の損害を被らせた。これに対し、会社側がDの任務懈怠に基づく損害賠償を求めた事案である。原審はDの善管注意義務違反を認め、損害賠償義務を肯定したため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
判決文によれば、事実関係のもとにおいて、訴外Dは「取締役として善良な管理者の注意を怠り」会社に損害を被らせたと認定されている。具体的な義務違反の内容(経営判断のミスや法令違反等)の詳細は判決文からは不明であるが、原審が認定した証拠関係に照らし、Dの行為は当時の取締役に期待される注意義務の範囲を逸脱しており、その懈怠と損害発生との間に因果関係が認められると判断された。最高裁もこの原審の事実認定および判断を正当として是認した。
結論
訴外Dは取締役としての善管注意義務を怠ったものといえ、被上告会社に対し、生じた損害1556万4852円を賠償すべき義務がある。
実務上の射程
会社法423条1項に基づく取締役の対会社責任を追及する際の基礎的な判断枠組みを示す。実務上・答案上は、本判決が前提とする善管注意義務の具体的内容(経営判断原則の適用有無等)を検討した上で、任務懈怠の有無を論証する際のリファレンスとなる。ただし、本判決自体は事実認定の是非が主眼であり、詳細な規範定立はなされていない点に注意を要する。
事件番号: 昭和43(オ)275 / 裁判年月日: 昭和44年12月19日 / 結論: 棄却
牛乳小売業者が、継続的に牛乳の卸売を受けて来た仕入先に対し、右取引上の債務を担保するため、所有店舗に根抵当権を設定し代物弁済の予約を結んでいた場合において、代金の支払を遅滞したため、取引を打ち切り担保権を実行する旨の通知を受けるに及んで、これを免れて従前どおりの営業の継続をはかる目的のもとに、原判示(原判決理由参照)の…