抗告人と相手方との間には、抗告人が相手方の著作に対する検定という方式を通して相手方の有する表現の自由を糊限したという法律関係が存在する旨の原決定の判示は、抗告人および相手方の判示主張事実を前提とすれば右法律関係が存在することとなるとしているものにすぎず、本件検定が相手方の表現の自由を侵害している旨を原審みずからが判断したものではないから、原審が右のような判断をしたものであるとして原決定の違憲をいう抗告理由は、その前提を欠くに帰し、特別抗告適法の理由とは認められず、右抗告は不適法として却下すべきである。
適法な抗告理由とは認められないとして特別抗告が却下された事例
民法312条,民法419条ノ2
判旨
検定実施者が作成した検定内容(判定理由)を構成する文書は、検定による表現の自由の制限という法律関係に基づいて作成された文書に該当し得る。文書提出命令の申立に対する抗告審の判断は、文書の該当性を判断した上で、必要に応じて受訴裁判所に差し戻すべきものである。
問題の所在(論点)
教科書検定の判定理由等を構成する行政文書が、旧民事訴訟法312条3号後段(現行220条3号後段)にいう「挙証者が相手方との間の法律関係について作成された文書」に該当するか。また、抗告審が当該文書の該当性を肯定して差し戻すことの適否。
規範
文書提出命令(旧民訴法312条3号後段、現行220条3号後段)の対象となる「法律関係について作成された文書」とは、当事者間の権利義務関係の発生、変更、消滅またはその内容を証するために作成された文書を指す。行政庁による教科書検定という公権力の行使を通じて、著作者の表現の自由が制限されるという法律上の利害関係が存在する場合、その判定理由を構成する内部文書は、当該法律関係について作成された文書に当たり得る。
重要事実
教科書の著作者(相手方)が、文部大臣による教科書検定が表現の自由を侵害するとして損害賠償請求等を提起した。その訴訟過程において、相手方は検定内容の詳細な判定理由が記載された文書の提出命令を申し立てた。第一審は提出義務を否定したが、原審(抗告審)は、検定という方式を通じて表現の自由を制限した法律関係が存在し、当該文書はその法律関係について作成されたものであるとして第一審を取消し、差し戻した。これに対し、国側(抗告人)が憲法違反等を理由に特別抗告を行った事案である。
事件番号: 昭和44(ク)375 / 裁判年月日: 昭和46年12月17日 / 結論: 却下
抗告人と相手方との間には、抗告人が相手方の著作に対する検定という方式を通して相手方の有する表現の自由を制限したという法律関係が存在する旨の原決定の判示は、抗告人および相手方の判示主張事実を前提とすれば右法律関係が存在することとなるとしているものにすぎず、本件検定が相手方の表現の自由を侵害している旨を原審みずからが判断し…
あてはめ
原審の判断は、①検定により表現の自由が侵害されたとの主張、②検定実施の事実、③判定結果の具体的理由を文書で通知しない行政慣行、という各前提に基づいている。これらの前提の下では、行政庁が検定手続に関して法律上作成を要求され、現に作成した判定理由を構成する文書は、表現の自由の制限という法律関係について作成されたものと解される。また、文書提出命令の許否は受訴裁判所の専権事項であるが、抗告審は文書の該当性(提出義務の有無)を判断した上で、訴訟の進行状況や立証の必要性を検討させるため第一審に差し戻すことができる。
結論
教科書検定の判定理由を構成する文書は「法律関係について作成された文書」に該当し得るとした原審の判断に違憲はなく、特別抗告を却下する。
実務上の射程
行政処分や公権力の行使をめぐる損害賠償請求において、行政内部の理由付記文書が文書提出命令の対象となるか(220条3号後段)を検討する際の指標となる。ただし、本決定はあくまで「該当し得る」という判断枠組みを示し、具体的な提出の要否(立証の必要性等)は受訴裁判所の裁量に委ねている点に注意が必要である。答案上は、特段の秘匿性の抗弁がない限り、公権力行使に伴う権利制限の基礎となる文書について提出義務を肯定する論拠として活用できる。
事件番号: 平成11(許)26 / 裁判年月日: 平成12年3月10日 / 結論: 破棄自判
文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会が作成した教科用図書についての判定内容を記載した書面及びその内容を記載した文部大臣に対する報告書は、民訴法二二〇条三号後段の文書に当たらない。
事件番号: 平成16(許)14 / 裁判年月日: 平成16年11月26日 / 結論: 棄却
1 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成15(許)40 / 裁判年月日: 平成16年5月25日 / 結論: 破棄自判
1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等…