控訴審における新たな相殺の主張は、その主張事実について民訴法一四〇条の適用がある。
控訴審における新たな相殺の主張と民訴法一四〇条の適用
民訴法140条
判旨
当事者が口頭弁論期日に出頭せず、相手方の主張した事実を明らかに争わない場合、弁論の全趣旨により争ったと認められない限り、民事訴訟法上の自白とみなされ、裁判所はその事実に拘束される。ただし、第一審等の経過から明らかに争っていることが認められる事実については、擬制自白の適用を受けない。
問題の所在(論点)
当事者が控訴審の期日に不出頭であった場合、相手方が新たに行った主張事実に民事訴訟法159条(擬制自白)の適用があるか。また、第一審で既に争われていた事実についても同様の適用があるか。
規範
当事者が口頭弁論期日に欠席し、相手方の主張事実を明らかに争わない場合、弁論の全趣旨によりこれを争ったと認めるべき事情のない限り、民事訴訟法159条(旧140条)の規定に基づき、その事実を自白したものとみなす(擬制自白)。裁判所はこの自白とみなされた事実をそのまま基礎として裁判しなければならない。ただし、訴訟の全過程(第一審を含む)を通じて既に争う姿勢が明確である事実については、不出頭をもって直ちに擬制自白を認めることはできない。
重要事実
貸金請求事件の第一審で敗訴した上告人(被告)が控訴し、原審(控訴審)の口頭弁論期日において、被上告人(原告)に対する反対債権(亜炭売買契約に基づく債権)を取得したとして相殺の主張をした。これに対し、被上告人は数回にわたる原審期日に一度も出頭しなかった。上告人が主張した相殺の基礎となる事実のうち、売買契約の締結事実は第一審から主張され、被上告人が既にこれを争っていたが、相殺に関するその他の付随的事実については争った形跡がなかった。
あてはめ
まず、売買契約の存否等の事実については、上告人が第一審から主張しており、被上告人がこれを争っていることは記録上明らかである。したがって、不出頭であっても民訴法159条の適用はなく、原審が証拠調べに基づき事実認定したことに違法はない。次に、相殺に関するその余の主張事実については、被上告人が争った形跡や弁論の全趣旨から争ったと認めるべき事情がないため、原審はこれらを自白とみなして裁判の基礎とすべきであった。原審がこれらにつき証拠調べを行った点は違法であるが、結論として上告人の主張と同一の事実を認定しているため、判決の結論に影響を及ぼすものではない。
結論
被上告人が不出頭であっても、既に争議の対象となっていた事実を除き、擬制自白が成立する。原審の判断に一部手続的違法はあるが、結論に影響しないため、本件上告は棄却される。
実務上の射程
不出頭時の擬制自白の成否を判断する際の基準を示す。特に「弁論の全趣旨」を考慮して争う意思の有無を確認する実務上の運用を肯定した点、および先行する審級での争点化状況が擬制自白の適用範囲を画定する要素となる点に射程が及ぶ。
事件番号: 昭和30(オ)577 / 裁判年月日: 昭和31年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】口頭弁論期日における自白に類する陳述について、後の準備書面による訂正が認められない場合、当該陳述は有効な裁判上の自白として維持される。 第1 事案の概要:被告(上告人)は、第一審の口頭弁論において、原告が提出した甲第一、二号証(帳簿)について「原告会社の帳簿であることは認めるが、内容は不知」と陳述…