登記簿上後順位の抵当権者またはいわゆる仮登記担保権者であつた者でも、先順位の仮登記担保権者から不動産登記法一〇五条に基づく本登記手続承諾請求を受けた当時、すでに他にその登記につき附記登記による権利移転の登記を経由した者は、特段の事情のない限り、登記原因たる実体上の権利に基づき、仮登記担保権者に対して清算金を受けるべき地位にあることを主張することはできない。
登記簿上後順位の債権者(抵当権者またはいわゆる仮登記担保権者)であつたがすでにその登記につき他に附記登記による権利移転の登記を経由した者といわゆる仮登記担保権者による本登記承諾請求訴訟における引換給付の抗弁権提出の可否
民法369条,民法482条,不動産登記法7条,不動産登記法105条
判旨
仮登記担保権者が本登記を請求する場合、債務者や後順位債権者等の利害関係人は、清算金の支払と引換えにのみ本登記手続または承諾義務を履行すべき旨を主張できる。
問題の所在(論点)
仮登記担保において、債権者が本登記手続(および利害関係人に対する承諾)を請求する場合、債務者や登記上の利害関係人は清算金の支払との引換給付を主張できるか。
規範
売買予約等の形式による担保契約は、目的不動産から債権の優先弁済を受けることを目的とするものであり、債権者は不動産価値から自己の債権額を差し引いた残額(清算金)を物件所有者に支払う義務を負う。仮登記に基づく本登記手続において、登記上の利害関係人(後順位債権者や第三取得者)は、自ら清算金の支払を受けるべき地位にあり、不動産登記法上の承諾義務を清算金支払との引換給付とするよう主張できる。また、物件所有者も、客観的・合理的理由がある場合を除き、清算金残額の支払との引換給付を主張できる。
重要事実
債権者(被上告人)は、債務者らに対する貸金債権を担保するため、各不動産について売買予約を原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した。その後、後順位の仮登記権利者(A8)や根抵当権者(A9)が現れ、さらにそれらの権利を承継しつつ不動産の譲渡を受けた第三取得者(A10産業)が登場した。被上告人が担保権実行のため本登記手続および利害関係人の承諾を求めたところ、債務者らは清算が行われていないことを理由にこれを拒んだ。
事件番号: 昭和44(オ)175 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄差戻
代物弁済予約形式の債権担保契約を締結し、これを原因とする所有権移転請求権保全の仮登記を経由した債権者が、予約完結権を行使したうえ、担保目的実現の手段として本登記をするため、登記上利害関係を有する後順位抵当権者その他目的不動産から優先弁済を受ける地位を有する債権者および目的不動産の第三取得者に対し、その承諾を訴求する場合…
あてはめ
仮登記担保の実質は優先弁済を受けるための権利であり、本登記による所有権取得は担保権実現の手段にすぎない。A10産業は第三取得者または後順位債権者の地位にあり、清算金の支払を受けるべき権利があるため、承諾義務と清算金支払の引換を主張し得る。また、債務者ら(A6、Dの承継人ら)についても、A10産業への譲渡が実質的に担保目的であれば依然として所有権を失っておらず、清算金残額の交付を請求し得る。したがって、清算未了を理由とする拒絶の主張は、釈明を通じて引換給付の主張として扱うべきである。他方、既に登記名義を失った旧後順位者(A8、A9)は、実体上の権利も失っているため、承諾を拒む地位にない。
結論
債務者や第三取得者らは、清算金の支払と引換えにのみ本登記手続および承諾義務を負う。原審が引換給付の審理を尽くさず直ちに請求を認容した点は、法令の解釈適用の誤りおよび審理不尽があるとして破棄差戻しを免れない。
実務上の射程
仮登記担保法制定前の判例であるが、同法3条・13条等の清算金支払と本登記・引渡しの引換給付関係を基礎づける法理として、現在も実務上の射程を有する。
事件番号: 昭和46(オ)213 / 裁判年月日: 昭和46年6月11日 / 結論: 棄却
甲が、乙との間に、農地法五条所定の知事の許可を条件として乙所有の農地を買い受ける契約をし、これに基づいて所有権移転請求権保全の仮登記を経由し、次いで右売買契約上の買主たる地位を丙に譲渡して、右仮登記につき丙への移転の附記登記をした場合において、丙が、右譲渡につき乙の承諾を得、乙との間に、乙において丙のため宅地転用の許可…
事件番号: 昭和56(オ)473 / 裁判年月日: 昭和57年4月9日 / 結論: 棄却
後順位担保権者の申立による不動産競売手続が開始されている場合であつても、仮登記担保権者に優先する他の担保権者が存在せず、かつ、換価時における目的不動産の価格が仮登記担保権者の有する仮登記担保権の被担保債権額及び右後順位担保権者に優先する他の担保権の被担保債権額の合計額を超えないなど、原判示の事実関係のもとにおいては、仮…
事件番号: 昭和34(オ)343 / 裁判年月日: 昭和36年7月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代理人として売買契約等の交渉に当たった者が、真の買受人であるか、それとも本人の代理人として行動したに過ぎないかは、証拠を総合して判断される事実認定の問題である。本判決は、交渉の衝に当たった事実があるからといって直ちにその者を真の権利者と認めることはできないとした。 第1 事案の概要:第一審参加人E…
事件番号: 昭和45(オ)731 / 裁判年月日: 昭和45年12月24日 / 結論: 破棄差戻
清算型代物弁済予約の予約権者が、登記簿上利害関係を有する後順位債権者に対して本登記の承諾を求める場合には、右予約権者は、それらの者の債権額および優先順位に応じて清算金を同人らに交付すべき義務があり、同人らは、その交付を受けるのと引換えにのみ右承諾義務の履行をすべき旨を主張しうるものと解すべきである。