他行小切手による当座預金への入金は、当該小切手の取立委任と、その取立完了を停止条件とする当座預金契約であるから、受入金融機関は、特別の約定がないかぎり、他行小切手の取立完了前においては、当該小切手の金額に見合う当座支払の義務を負わないものと解すべきである。
他行小切手による当座預金への入金と預金の成立
民法666条
判旨
他行小切手による当座預金への入金は、特約がない限り、当該小切手の取立完了を停止条件とする預金契約である。したがって、金融機関は取立完了前において、その金額に見合う当座支払義務を負わない。
問題の所在(論点)
他行小切手によって当座預金に入金がなされた場合、その取立が完了する前の段階において、銀行は当該入金額を原資とした手形支払(当座支払)の義務を負うか。当座預金契約の性質と停止条件の成否が問題となる。
規範
他行小切手による当座預金への入金は、当該小切手の取立委任と、その取立完了を停止条件とする当座預金契約であると解される。したがって、受入金融機関は、特別の約定がない限り、他行小切手の取立完了前においては、当該小切手の金額に見合う当座支払の義務を負わない。
重要事実
約束手形の振出人である上告人は、支払期日である昭和37年2月17日に、被上告銀行の自己の当座預金口座へ現金および3通の他行小切手による振込を行った。しかし、当該小切手はいずれも同日中に取立が完了していなかった。銀行が手形決済を行わなかったため、上告人は支払義務の存否等を争った。
あてはめ
本件において、上告人の当座預金残高のうち現金による入金分は、正午現在で1万9,241円、午後3時30分頃でも13万9,741円であった。これに対し、残りの入金分は取立未了の他行小切手によるものであった。前述の規範に照らせば、取立が完了していない小切手分については、銀行に支払義務が生じる預金状態にはない。現金分のみでは本件手形を決済するに足りないため、銀行は支払義務を負わないと解される。
結論
他行小切手の取立完了前においては、銀行は当該金額を支払に充てる義務を負わない。したがって、残高不足として手形決済を拒絶した判断は正当である。
実務上の射程
当座預金への入金事務の法的性質を「取立完了を停止条件とする契約」と定義した重要判例である。実務上、不渡処分の有効性や銀行の不法行為責任が問われる場面で、支払義務の発生時期を確定させる基準として機能する。
事件番号: 昭和29(オ)758 / 裁判年月日: 昭和33年6月3日 / 結論: その他
貸金債務の支払確保のため債権者に小切手を交付した債務者は、特段の事由がないかぎり、右資金の支払は、小切手の返還と引換にすべき旨の同時履行の抗弁をなし得るものと解するを相当とする