「D」の漢字を縦書きして成り、旧々類別五〇類の紙その他本類に属する商品を指定商品とするYの引用商標がある場合において、Yがその前身時代を含めて昭和一〇年前後から京花紙一号につき右商標を使用して来たとはいえ、要するに、併存する他の不特定多数の「D」商標使用者の単なる一員としてこれを使用したにすぎず、取引者、需要者からとくにYの「D」商標として注目され、知られることなくして推移した等原判示のような事情(原判決理由参照)があるときは、「文楽D」の漢字を一連に縦書きして成り、旧類別五〇類の「紙及他類ニ属セサル其ノ製品」を指定商品とし、昭和三三年に登録されたXの本件商標は、旧商標法(大正一〇年法律第九九号)二条一項一一号に該当しない。
「D」の漢字を縦書きして成る商標と「文楽D」の漢字を一連に縦書きして成る商標が同種商品を指定商品とする場合に旧商標法(大正一〇年法律第九九号)二条一項一一号の適用が否定された事例
旧商標法(大正10年法律第99号)2条1項11号
判旨
商標のみを表示し出願人の名称を併記しない使用態様においては、看者が当該商標を認識したとしても、特定の出願人に係る商標であると認識できない限り、当該商標の使用とは認められない。
問題の所在(論点)
商標出願人等の名称を併記せず、商標のみを表示している場合において、それが特定の主体による商標の使用であると認められるか(商標としての認識可能性)。
規範
商標法(旧法)上の商標の使用として認められるためには、単に商標が客観的に表示されているだけでは足りず、看者において当該商標が特定の主体(出願人・権利者)に係るものであることを認識し得る態様でなされることを要する。
重要事実
上告人は、自らが出願した「D」という商標について、その使用実績を主張した。しかし、実際の上標表示においては上告人名の表示が伴っておらず、アルファベットの「D」という商標のみが独立して表示されている状態であった。
事件番号: 昭和42(行ツ)32 / 裁判年月日: 昭和43年2月9日 / 結論: 棄却
一、商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品との具体的関係において使用されていなければならない。 二、青星の文字を極端に変更、図案化した「(商標は末尾添付)」なる登録商標がその特殊形態または少なくとも取引上これと同視されるべき形態において使用され…
あてはめ
本件では、上告人名の表示を伴わずに「D」商標のみが表示されていた。このような態様では、看者が「D」という符号自体を認識することはあっても、それが「上告人の商標である」という認識を生じさせることは困難である。したがって、特定の主体と結びついた商標の使用としての実質を欠いていると評価される。
結論
上告人名の表示を伴わない「D」商標の表示のみでは、上告人の商標としての認識を生じさせないため、有効な商標の使用とは認められない。
実務上の射程
商標の不使用取消審判における「使用」の成否や、周知・著名性の判断において、氏名や屋号が併記されていない場合の立証の限界を示す。符号のみの表示では出所表示機能が果たされていないと判断されるリスクを指摘する際に有用である。
事件番号: 昭和41(行ツ)36 / 裁判年月日: 昭和43年12月13日 / 結論: 棄却
いずれも薬剤等を指定商品とした「リユーマゾロン」なる商標と「ロイマゾン」なる商標とは観念において類似するものと認むべきである。
事件番号: 昭和42(行ツ)9 / 裁判年月日: 昭和46年1月26日 / 結論: 棄却
一、「松魚つぶ」の文字を縦書し、「松魚」の文字の右側に「カツヲ」の文字を振仮名して成る商標(指定商品、旧四三類飴菓子)および「土佐自慢」の文字の下方にこれよりやや大きく「初鰹」の文字をいずれも通常の書体で縦書して成る商標(指定商品、旧四三類菓子及び麺麭の類)がある場合において、右両商標から共通して抽出される「かつを」の…
事件番号: 昭和40(行ツ)60 / 裁判年月日: 昭和43年11月5日 / 結論: 棄却
旧商標法(大正一〇年法律第九九号)第一二条第一項にいう商標権をその営業とともに移転するとは、商標権の譲渡人が従来その商標を使用した指定商品の営業において以後これを使用せず、譲受人がその商標を使用して譲渡人と同様の指定商品の営業をなしうる状態を現出すれば足り、その譲渡される商標権とともにこれを行使していた範囲の営業がこと…
事件番号: 昭和40(行ツ)22 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
片仮名で「ジム」と横書きされて成り「事務用機械器具」を指定商品とする商標は、右指定商品の用途を表示するものとは認めがたく、商標法第三条第一項第三号に該当しない。