一、民間会社において、使用者が従業員の在籍専従を認めるか否かは、その自由に委ねられているものと解するのが相当である。 二、労働組合法一七条の規定により拡張適用される労働協約の範囲は、いわゆる規範的部分にかぎられる。 三、在籍専従に関する労働協約の規定は、いわゆる規範的部分に属しない。
一、民間会社における従業員の在籍専従と使用者の承諾義務 二、労働組合法一七条の規定により拡張適用される労働協約の範囲 三、在籍専従に関する労働協約の規定の法的性質
憲法28条,労働組合法2条,労働組合法16条,労働組合法17条
判旨
在籍専従の可否は原則として使用者の自由に委ねられ、在籍専従に関する労働協約の定めは労働組合法17条の拡張適用の対象となる「規範的部分」には含まれない。
問題の所在(論点)
1. 在籍専従を認める労働協約の定めは、労働組合法17条の拡張適用の対象となる「規範的部分」に当たるか。2. 会社側の承認なく行われた在籍専従目的の職場離脱は、不当労働行為(労組法7条1号)における正当な争議行為に該当するか。
規範
1. 在籍専従(従業員身分を保有しつつ専ら組合業務に従事すること)をなす権利は、憲法28条から当然に派生する固有の権利ではなく、その是非は使用者の自由に委ねられる。2. 労働組合法17条により拡張適用される労働協約の範囲は、労働条件および労働者の待遇について定めたいわゆる「規範的部分」に限られ、在籍専従に関する定めはこれに含まれない。3. 組合の指令に基づく行動であっても、組合の要求貫徹のための手段としての性格を欠く職場離脱は、争議行為には当たらない。
重要事実
臨時従業員である上告人Aが、会社の承認を得ないまま在籍専従の状態に入り、職場を離脱して組合業務に従事した。会社側はAの雇用契約の更新を拒絶。上告人らは、在籍専従を認める労働協約が労働組合法17条に基づき臨時従業員にも拡張適用されるべきであること、およびAの行動は正当な争議行為であること等を主張して争った。
あてはめ
1. 拡張適用の成否について、労働協約のうち規範的部分とは労働条件や待遇に関する定めを指すが、在籍専従は本来の労働契約上の義務を免除する特異な合意であり、労働条件そのものではないため、規範的部分には属さない。2. 争議行為の該当性について、Aの職場離脱は「承認なくとも専従できる」という独自の法的見解に基づくものであり、組合の要求を貫徹するための対抗手段としての実態を欠く。したがって、たとえ組合指令に基づいていたとしても争議行為とは評価できない。3. 以上の点に加え、臨時従業員は常用従業員と身分・待遇に大きな差異があることも考慮され、更新拒絶は権利濫用や不当労働行為には当たらない。
結論
本件更新拒絶は適法である。在籍専従に関する協約条項は規範的部分ではないため拡張適用されず、承認なき職場離脱は正当な争議行為にも当たらない。
実務上の射程
在籍専従の法的性質を「恩恵的措置」または「債務免除の合意」と捉える立場を鮮明にした。答案上では、労組法17条の拡張適用の限界(規範的部分の意義)を論じる際や、争議行為の定義(目的・手段の正当性)を検討する際の有力な準拠枠組みとなる。
事件番号: 昭和59(オ)1318 / 裁判年月日: 昭和61年7月14日 / 結論: 破棄差戻
全国的規模の会社の神戸営業所勤務の大学卒営業担当従業員が母親、妻及び長女と共に堺市内の母親名義の家屋に居住しているなど、判示の事実関係のみから、同従業員に対する名古屋営業所への転勤命令が権利の濫用に当たるということはできない。
事件番号: 昭和39(オ)773 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 棄却
使用者は、労働者が労働協約に基づく平和義務に違反する争議行為をし、またはこれに参加したことのみを理由として、当該労働者を懲戒処分に付することは許されない。