使用者は、労働者が労働協約に基づく平和義務に違反する争議行為をし、またはこれに参加したことのみを理由として、当該労働者を懲戒処分に付することは許されない。
平和義務違反の争議行為を理由とする懲戒処分の許否
労働組合法14条,労働基準法89条
判旨
平和義務に違反する争議行為は単なる労働契約上の債務不履行にすぎず、企業秩序の侵犯には当たらないため、当該違反のみを理由として懲戒処分を行うことはできない。
問題の所在(論点)
労働協約上の平和義務に違反する争議行為を行ったこと、またはこれに参加したことが、企業秩序を侵犯するものとして懲戒事由(懲戒解雇事由)に該当するか。
規範
懲戒処分は企業秩序違反に対する制裁罰である。労働協約上の平和義務(争議行為を差し控える義務)に違反する争議行為は、単なる労働契約上の債務不履行にすぎず、企業秩序の侵犯に当たるとはいえない。したがって、平和義務違反の争議行為への参加のみを理由に懲戒処分を付すことは許されない。
重要事実
上告会社(使用者)は、労働組合の支部長・副支部長である被上告人らに対し、無許可集会、ビラ掲示、労働歌合唱、および平和義務に違反する争議行為への参加等を理由として懲戒解雇を行った。被上告人らは、本件懲戒解雇の無効を主張して争った。原審は、平和義務違反の争議行為への参加が懲戒事由に該当しないと判断したため、会社側が上告した。
あてはめ
まず、懲戒解雇は企業秩序違反に対する制裁罰としての性質を有する。本件において、被上告人らが平和義務に違反して争議行為に参加した事実は認められるものの、平和義務違反はあくまで労働協約上の債務不履行という性格に留まるものである。これを企業秩序の直接的な侵犯と評価することはできず、個々の組合員による参加も同様に債務不履行の域を出ない。したがって、他の懲戒事由(ビラ掲示等)が解雇に値するほど重大でない以上、平和義務違反のみを理由として懲戒解雇という重い制裁を課すことはできないといえる。
結論
平和義務違反のみを理由とする懲戒解雇は認められず、本件懲戒解雇は無効である。
実務上の射程
平和義務違反が懲戒事由にならないことを明示した重要な判例である。答案上は、懲戒の法的性質(秩序維持権)を論じた上で、債務不履行と秩序違反を区別する文脈で使用する。ただし、平和義務違反に伴い暴力的行為や業務妨害等の具体的秩序乱しがあれば別途懲戒対象となり得る点に留意が必要である。
事件番号: 昭和49(オ)687 / 裁判年月日: 昭和52年12月13日 / 結論: 破棄自判
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事件番号: 昭和47(オ)777 / 裁判年月日: 昭和52年12月13日 / 結論: 破棄自判
一、日本電信電話公社の就業規則において禁止されている政治活動とは、人事院規則一四―七所定の政治的目的をもつてされる政治的行為を指すものではなく、社会通念上政治的と認められる活動をいう。 二、日本電信電話公社の職員が勤務時間中に「ベトナム侵略反対、米軍立川基地拡張阻止」と記載したプレートを着用してこれを職場の同僚に訴えか…