建物買取請求権およびその代金との引換給付を求める者の抗弁を第一審の最終口頭弁論期日および原審の第一回口頭弁論期日にいたつてはじめて提出した場合においても、当時賃貸人たる原告と訴外甲との間に別訴で係争土地の所有権の帰属が争われており、右抗弁を提出した被告らが甲から本件土地を賃借した旨主張して争つていた事情があるときは、被告らが右時機に右抗弁を提出したことに故意または重大な過失があるとはいえず、その提出を許容した原審の措置に違法があるとはいえない。
攻撃防禦方法の提出が遅れたことに故意または重大な過失がないとしてその提出を許容した原審の措置を適法とした事例
民訴法139条
判旨
転貸借の成立には、賃借人と転借人の間で賃貸借契約が締結されれば足り、特段の「転貸の意思」までは必要としない。また、建物買取請求権の行使が遅れたとしても、目的物の所有権帰属に紛争がある等の事情があれば、時機に後れた攻撃防御方法として却下されることはない。
問題の所在(論点)
1.転貸借の成立に「転貸の意思」は必要か。2.所有権帰属に紛争がある状況下で、建物買取請求の抗弁を後任の期日に提出したことが「故意または重大な過失」による時機に後れた攻撃防御方法にあたるか。
規範
転貸借の成立には、賃借人と転借人との間で、賃借人がその賃借物をさらに賃貸する旨の合意(賃貸借契約)がなされることで足りる。当事者に「転貸する」という主観的な意思(目的意識)があることは成立要件ではない。また、民事訴訟法上の時機に後れた攻撃防御方法(民訴法157条)に該当するかは、提出の遅延について故意または重大な過失があるか否かによって判断される。
重要事実
上告人(賃貸人)が、被上告人(転借人ら)に対し建物の明け渡しを求めた。被上告人らは第一審の最終口頭弁論期日および原審の第一回口頭弁論期日において、建物買取請求権の抗弁を提出した。この建物については、所有権の帰属に関して訴外Dと上告人らとの間に紛争があり、別件訴訟が係属中であった。被上告人らは当該建物をDから賃借していたが、上告人らは転貸の意思がないことや、抗弁の提出が遅滞していることを理由に不適法であると主張した。
事件番号: 昭和41(オ)991 / 裁判年月日: 昭和44年7月8日 / 結論: 破棄差戻
他人の土地の用益がその他人の承諾のない転貸借に基づくものである場合において、土地の継続的な用益という外形的事実が存在し、かつ、その用益が賃借の意思に基づくものであることが客観的に表現されているときは、その土地の賃借権ないし転借権を時効により取得することができる。
あてはめ
転貸借は客観的に賃貸借の合意があれば成立し、主観的な転貸の意思を要求しない。また、本件建物は所有権の帰属を巡りDと上告人らの間で紛争が生じており、被上告人らはDから賃借していたという経緯がある。このような複雑な権利関係が存在する状況下では、建物買取請求の抗弁を第一審の最終段階や控訴審の初期に提出したとしても、提出が遅れたことについて被上告人らに故意または重大な過失があったとは断じ難い。したがって、時機に後れたものとはいえない。
結論
転貸借関係を認めた原審の判断は相当であり、建物買取請求の抗弁を許容した措置に違法はない。上告棄却。
実務上の射程
転貸借の成立要件を簡潔に定義する際の根拠として利用できる。また、時機に後れた攻撃防御方法の判断において、権利関係の複雑性(係争中の別件の存在等)が「故意・重過失」を否定する要素となることを示しており、実務上の防御の可否を検討する際の参考になる。
事件番号: 昭和25(オ)140 / 裁判年月日: 昭和28年9月25日 / 結論: 棄却
賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
事件番号: 昭和42(オ)785 / 裁判年月日: 昭和42年12月8日 / 結論: 棄却
賃貸借の目的たる土地が四四・七坪である場合に、うち二三・七坪が無断転貸された場合は、特段の事情がない限り、右転貸は背信行為にあたるから、賃貸借の解除は有効である。
事件番号: 昭和42(オ)146 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
「推認」の語は、証拠によつて認定された間接事実を総合し、経験則を適用して主要事実を認定する場合に用いられる用語法であつて、証明度において劣る趣旨を示すものではない。
事件番号: 昭和38(オ)476 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 棄却
土地の賃貸人が、賃借人において賃借土地の一部を転貸している事実を知りながら、三年余にわたる賃貸人であつた期間中、なんらの異議を述べないで賃借人から賃料を取り立てていたときは、右転貸について黙示の承諾をしたものと認めるのが相当である。