踏切に警報機を設置したのみでは保安設備として不十分であり、少なくとも自動遮断機の設備をするのでなければ踏切道としての本来の機能を全うしえない状況にあるときは、踏切に自動遮断機の保安設備を欠いていることは、土地工作物の設置に瑕疵があつたものというべきである。
踏切道の設備に瑕疵があつたとされた事例
民法717条
判旨
踏切道の軌道施設は保安設備と一体として考察すべきであり、踏切の具体的状況に照らし、列車運行の確保と道路交通の安全の調整が全うされないほど保安設備が欠如している場合は、工作物の設置の瑕疵(民法717条1項)が認められる。
問題の所在(論点)
踏切道における工作物の瑕疵(民法717条1項)の有無。特に、保安設備の欠如が軌道施設自体の瑕疵を構成するか、および行政上の設置基準を満たすことが瑕疵を否定する根拠となるか。
規範
土地の工作物たる踏切道の軌道施設は、保安設備と一体として考察すべきである。工作物の設置の瑕疵の有無は、当該踏切の見通しの良否、交通量、列車回数等の具体的状況を基礎として、列車運行の確保と道路交通の安全との調整を全うし、事故の危険を防止するために本来備えるべき設備を欠いているか否かによって判断される。なお、行政上の設置標準(通達)に合致していても、民事上の賠償責任における瑕疵の有無はこれによって直ちに否定されない。
重要事実
貨物列車専用の踏切において、上告人は従前の第1種踏切(遮断機・警手あり)を第3種踏切(警報機のみ)に変更した。しかし、当該踏切は視距が極めて悪く、自動車が安全を確認するためには車体の一部を軌道内に乗り入れる必要があった。また、交通量は1日1500台を超え、列車の逆行運転(機関士の視界阻害)も頻繁に行われていた。設置された警報機も高所にあり近接すると見えにくく、警報音も弱かった。
あてはめ
本件踏切は視距が劣悪で交通量も多いため、安全確保のためには高度な保安設備を要する。警報機のみでは正常な注意力を持つ者でも安全な横断が困難な状況にあり、列車運行と道路交通の調整が全うされているとはいえない。遮断機がない状態は、本来備えるべき設備を欠いていると評価できる。行政通達は最低限の標準にすぎず、これを満たしていても具体的状況下で危険が排除されていなければ瑕疵は免れない。
結論
本件踏切には自動遮断機が設置されていなかった点において、工作物の設置の瑕疵が認められる。
実務上の射程
工作物責任(717条)における「瑕疵」を、単なる構造物自体の欠陥だけでなく、周囲の利用状況に応じた「保安設備(ソフト面を含む)」の不備も含めて判断する枠組みを示した。踏切事故以外の交通施設や公共施設の安全性判断にも広く射程が及ぶ。
事件番号: 昭和43(オ)431 / 裁判年月日: 昭和48年2月16日 / 結論: 棄却
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