原判決中未決勾留日数算入部分のみが破棄された事例
刑法21条,刑訴法405条2号,刑訴法410条1項
判旨
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することは許されない。本刑に算入できる未決勾留日数は、先行する刑の執行開始日の前日までに限られる。
問題の所在(論点)
刑法21条の「未決勾留の日数」として本刑に算入できる範囲が問題となる。特に、未決勾留期間中に別件の確定判決に基づく刑の執行が開始された場合、その重複期間を算入できるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、身分上の拘束が専ら当該事件の未決勾留によるものである場合に認められる。したがって、被告人が他の確定判決に基づく懲役刑の執行を受け始め、未決勾留が懲役刑の執行と期間的に重なる(競合する)場合には、その重複期間を本刑に算入することはできない。
重要事実
被告人は覚せい剤使用等の罪で勾留中、第一審で懲役10月の判決を受け、控訴した。しかし、被告人は以前に別件(条例違反等)で執行猶予付き判決を受けており、本件勾留中の昭和60年11月29日から、当該別件の執行猶予取消に伴う懲役刑(8月)の執行を受け始めた。原審(控訴審)は、被告人の控訴を棄却しつつ、控訴審における未決勾留日数のうち60日を本刑に算入する旨を言い渡した。
あてはめ
本件において、被告人が控訴を申し立てた昭和60年10月25日から、別件の懲役刑の執行が開始された同年11月29日の前日である11月28日までの35日間は、純粋な未決勾留期間といえる。しかし、11月29日以降は別件の懲役刑の執行と未決勾留が競合している。最高裁の判例法理に照らせば、懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を本刑に算入することは違法である。したがって、算入が許される限度は上記35日間に限られる。
結論
原判決のうち、35日を超える未決勾留日数を算入した部分は刑法21条の解釈を誤った違法があるため破棄される。本件で算入されるべき未決勾留日数は35日である。
実務上の射程
刑事実務における未決勾留日数の算入計算において、別件既決刑の執行との重複を排除する基準を示すものである。司法試験においては、刑法21条の適用範囲に関する基本的判例として、重複期間の算入否定を論ずる際に参照する。
事件番号: 昭和52(あ)1634 / 裁判年月日: 昭和53年2月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と未決勾留が競合する場合、刑法21条に基づき当該競合期間を本刑に算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反で勾留され、第一審で懲役6月の判決を受けた。被告人は控訴したが、控訴審の継続中に別罪(常習賭博等)による執行猶予が取り消され、懲役刑の執行が開始された…
事件番号: 平成12(あ)408 / 裁判年月日: 平成12年7月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】他の確定判決に係る懲役刑の執行期間中になされた未決勾留は、刑の執行と重複するものであるから、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反等の罪で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中の平成10年10月30日に、別件の覚せい剤取締法違…
事件番号: 平成25(あ)507 / 裁判年月日: 平成25年11月19日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】控訴審が被告人の控訴に基づき第一審判決を破棄する場合、控訴申立後の未決勾留日数は刑訴法495条2項2号により当然に全日本刑に通算されるため、裁判所に裁量的算入の余地はない。したがって、刑法21条を適用して未決勾留日数の一部を算入する旨を判決で言い渡すことは、法令適用を誤った判例違反である。 第1 …