原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例
刑法21条,刑訴法405条2号
判旨
他の確定判決に係る懲役刑の執行期間中になされた未決勾留は、刑の執行と重複するものであるから、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
他の確定判決に基づく刑の執行期間と重複する未決勾留の日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することができるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入は、身分上の自由を拘束された日数を刑の執行に代える制度である。したがって、他の確定判決に基づく刑の執行を受けている期間中になされた勾留については、既に身柄拘束が刑の執行として評価されている以上、これを重ねて当該事件の未決勾留日数として本刑に算入することは認められない。
重要事実
被告人は覚せい剤取締法違反等の罪で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中の平成10年10月30日に、別件の覚せい剤取締法違反による懲役2年4月の判決が確定し、刑の執行が開始された。第二審(原審)は控訴棄却の判決を言い渡す際、別件の刑の執行中であった第二審における未決勾留日数のうち90日を本刑に算入した。
あてはめ
被告人は平成10年10月30日から別件の刑の執行を開始されており、原判決の言渡し当時は依然としてその執行中であった。そうすると、本件の原審における未決勾留の全期間が別件の刑の執行と重複していることが明らかである。刑の執行と重複する期間を未決勾留日数として本刑に算入することは、刑法21条の適用を誤った判例違反(最裁昭32年12月25日等)にあたる。
結論
他の確定判決の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入した原判決の部分は違法であり、破棄を免れない。
実務上の射程
実務上、被告人が余罪で服役中に別件で追起訴・勾留された場合、その勾留期間は「未決勾留」としての実質を欠く(既決の執行である)ため、算入の対象外となる。刑事弁護においては、算入を求める際に他罪の執行状況を確認する必要がある。答案上は、未決勾留の算入の可否が問われる場面で、執行の重複の有無を検討する際の判断枠組みとして活用する。
事件番号: 昭和52(あ)1634 / 裁判年月日: 昭和53年2月9日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と未決勾留が競合する場合、刑法21条に基づき当該競合期間を本刑に算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反で勾留され、第一審で懲役6月の判決を受けた。被告人は控訴したが、控訴審の継続中に別罪(常習賭博等)による執行猶予が取り消され、懲役刑の執行が開始された…