一 甲事件の裁判確定によりその本刑たる自由刑の執行に替えられるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入しても、ただちにこれを違法なものとはいえないが、右裁判は、後に甲事件の裁判が確定したことによつて、結局、違法なものとなる。 二 原判決の違法が、後に他事件の裁判確定によつてその本刑たる自由刑の執行に替えられた未決勾留と重複する未決勾留を裁量により本刑に算入した点のみにある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
一 甲事件の裁判確定によりその本刑たる自由刑の執行に替えられるべき未決勾留と重複する未決勾留を乙事件の本刑に算入することの適否 二 原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法411条1号,刑訴法495条
判旨
複数の勾留状により拘禁されている被告人に対し、既に他事件の裁判確定によりその本刑に算入(自由刑の執行に代替)された未決勾留日数を、当該事件の本刑に重ねて算入することは、被告人に不当な利益を与えるものであり、刑法21条に違反する。
問題の所在(論点)
刑法21条に基づく未決勾留日数の算入において、他事件ですでに本刑に算入・通算され、実質的に刑の執行に充てられた期間を、当該事件においてさらに重ねて算入することの可否。
規範
被告人が複数の勾留状により拘禁されている場合において、他事件に対する裁判の確定により、その本刑(自由刑)の執行に替えられるべき未決勾留(算入・通算された日数)と重複する未決勾留を、さらに当該事件の本刑に算入することは、二重の利益を与える結果となるため許されない。このような算入を行った裁判は、他事件の確定により、結局、刑法21条および刑訴法495条に違反する違法なものとなる。
重要事実
被告人は本件(懲役1年4月)と別件(懲役2年等)につき、それぞれ勾留・起訴された。本件の控訴審判決は、未決勾留日数のうち220日を本刑に算入すると言い渡した。しかし、別件の判決が先に確定し、その際、本件の未決勾留期間と重複する期間(211日分)が既に別件の本刑に算入・通算されていた。その結果、本件の判決で算入された220日のうち108日が、別件で既に自由刑の執行に替えられた日数と二重に重複する状態となった。
あてはめ
本件における原審の未決勾留期間323日のうち、211日は別件の確定によって既にその本刑(自由刑)の執行に替えられている。原判決がこのまま確定すると、別件で既に執行済みとみなされた108日分が、本件でも再度算入されることになり、被告人に不当な利益を与える。原判決言い渡し時には別件が上告中であったため直ちに違法とはいえないが、その後の別件確定により、112日を超えて算入した部分は刑法21条等の法令に違反するに至ったといえる。
結論
他事件で既に刑に算入された未決勾留日数を重ねて算入することは違法である。原判決のうち112日を超えて算入した部分は破棄を免れない。
実務上の射程
併合罪(刑法45条前段)の関係にない別個の事件であっても、実質的な未決勾留の「二重算入」を禁止する射程を有する。答案上は、未決勾留の算入(刑法21条)の適法性を論ずる際、実質的な刑の執行の代替という趣旨から、他事件での算入状況を考慮すべき根拠として用いる。
事件番号: 平成12(あ)408 / 裁判年月日: 平成12年7月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】他の確定判決に係る懲役刑の執行期間中になされた未決勾留は、刑の執行と重複するものであるから、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反等の罪で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中の平成10年10月30日に、別件の覚せい剤取締法違…