原審の未決算入に誤りがあり、判例違反として破棄された事例
刑法21条
判旨
懲役刑の執行と競合する未決勾留の日数は、刑法21条の「未決勾留日数」に含まれず、本刑に算入することはできない。既決刑の執行を受けている期間は、実質的に自由を拘束された状態にあるものの、身柄拘束の根拠が既に確定した刑の執行にあるためである。
問題の所在(論点)
懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を、刑法21条により本刑に算入することができるか(既決刑執行期間中の未決勾留算入の可否)。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入について、懲役刑等の既決刑の執行と競合する期間は、その算入の対象とはならない。未決勾留の算入は、裁判確定前の身柄拘束を実質的な刑の執行と等しいものとみなして調整する制度であるが、既決刑の執行中は本来的に身体の自由が制限されているため、その期間を重ねて「未決勾留」として算入することは許されない。
重要事実
被告人は、本件の起訴後に第1審で懲役1年の判決を受け控訴したが、その控訴審の期間中、別件の覚せい剤取締法違反による確定判決(懲役2年)に基づき刑の執行を受けていた。原審(控訴審)は、控訴棄却の判決を言い渡す際、この刑執行期間と重なる控訴審中の未決勾留日数のうち90日を、本件の本刑に算入する旨の裁判を行った。
あてはめ
被告人は別件の懲役刑が確定し、即日その刑の執行が開始されている。原審における未決勾留期間は、その全期間が上記既決刑の執行と競合していた。既決刑の執行による身柄拘束は、本件の未決勾留とは性質を異にする適法な刑の執行であり、これをさらに本件の未決勾留として算入することは、刑法21条の適用を誤ったものといえる。
結論
懲役刑の執行と競合する未決勾留の日数を本刑に算入することは違法である。したがって、算入を認めた原判決の当該部分は破棄を免れない。
実務上の射程
司法試験等の刑事実務・刑法において、未決勾留日数の算入(刑法21条)の限界を示す重要判例である。起訴後の別件確定により刑の執行が始まった場合、それ以降の期間は「未決勾留」としての評価を受けないことを明文化しており、実務上の算入日数の計算において必須の知識となる。
事件番号: 昭和61(あ)369 / 裁判年月日: 昭和61年10月21日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することは許されない。本刑に算入できる未決勾留日数は、先行する刑の執行開始日の前日までに限られる。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤使用等の罪で勾留中、第一審で懲役10月の判決を受け、控訴した。しかし、被告人は以前に別件(条例違反…
事件番号: 平成12(あ)408 / 裁判年月日: 平成12年7月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】他の確定判決に係る懲役刑の執行期間中になされた未決勾留は、刑の執行と重複するものであるから、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反等の罪で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中の平成10年10月30日に、別件の覚せい剤取締法違…
事件番号: 昭和53(あ)2328 / 裁判年月日: 昭和54年4月19日 / 結論: その他
原判決の違法が、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。