原判決の違法が、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
原判決中未決勾留日数算入の部分のみが破棄された事例
刑法21条,刑訴法357条,刑訴法410条1項
判旨
未決勾留と罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行が競合する場合、その競合する期間の日数を、刑法21条に基づき本刑に算入することは許されない。
問題の所在(論点)
未決勾留期間中に別件の罰金刑に基づく労役場留置の執行が行われた場合、当該競合期間を刑法21条によって本刑に算入できるか。
規範
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑への算入は、身分拘束の重複を避ける趣旨から行われるものである。したがって、未決勾留と競合して罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行が行われた場合には、既に他の刑の執行として身体拘束がなされている以上、その競合する未決勾留の日数を本刑に算入すべきではない。
重要事実
被告人は傷害の事実により勾留され、第一審で懲役2年6月の判決を受けた。被告人は控訴したが、その控訴審の未決勾留期間中(昭和53年9月18日から同年11月6日まで)、別件の道路交通法違反の罪に係る罰金刑の換刑処分として労役場留置の執行を受けた。原審は、この労役場留置期間を含む130日を本刑に算入したが、検察官がその算入の適否を争って上告した。
あてはめ
本件において、被告人の控訴申立の日(昭和53年6月24日)から原判決言渡の前日(同年11月27日)までの期間のうち、9月18日から11月6日までは労役場留置が執行されている。この期間は別個の裁判に基づく刑の執行中であり、未決勾留としての性質を事実上失っているため、刑法21条の算入対象から除外されるべきである。したがって、算入が許されるのは、労役場留置開始前日の9月17日までの86日間と、終了翌日の11月7日以降の21日間を合計した107日間に限られる。
結論
未決勾留と労役場留置が競合する期間を本刑に算入することはできず、原判決のうち107日を超える算入部分は破棄されるべきである。
実務上の射程
本判決は、刑法21条の「未決勾留」の射程を画するものであり、他の刑罰(自由刑や換刑処分)の執行と重なる場合には、当該期間を算入できないとする実務上の確立した基準を示している。答案上は、勾留期間中に別件の既判力に基づく執行がある場合の計算根拠として利用する。
事件番号: 昭和51(あ)2144 / 裁判年月日: 昭和52年5月27日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】懲役刑の執行と競合する未決勾留の日数は、刑法21条の「未決勾留日数」に含まれず、本刑に算入することはできない。既決刑の執行を受けている期間は、実質的に自由を拘束された状態にあるものの、身柄拘束の根拠が既に確定した刑の執行にあるためである。 第1 事案の概要:被告人は、本件の起訴後に第1審で懲役1年…
事件番号: 平成4(あ)1180 / 裁判年月日: 平成5年4月13日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は暴力行為等処罰法違反等で勾留中、別罪(傷害罪)により罰金30万円に処せられた。その後、当該罰金刑の換刑処分として平成4年9月21日から労役場留置の執行が開始…
事件番号: 平成12(あ)408 / 裁判年月日: 平成12年7月13日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】他の確定判決に係る懲役刑の執行期間中になされた未決勾留は、刑の執行と重複するものであるから、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は覚せい剤取締法違反等の罪で第一審・第二審を通じて勾留されていたが、その勾留期間中の平成10年10月30日に、別件の覚せい剤取締法違…