原判決中未決勾留日数算入部分が破棄された事例
刑法21条,刑訴法450条2号
判旨
罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。
問題の所在(論点)
被告人が別罪の罰金刑に基づき労役場留置の執行を受けている期間において、当該期間中の本件に係る未決勾留日数を本刑に算入することが、刑法21条の適用において許容されるか。
規範
刑法21条は未決勾留日数の本刑算入を認めるが、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数については、これを本刑に算入することは違法である(最高裁昭和42年5月26日判決、昭和54年4月19日判決参照)。
重要事実
被告人は暴力行為等処罰法違反等で勾留中、別罪(傷害罪)により罰金30万円に処せられた。その後、当該罰金刑の換刑処分として平成4年9月21日から労役場留置の執行が開始されたが、原審(同年11月18日判決)は控訴提起日(同年7月14日)から判決言い渡しまでの期間のうち「70日」を本刑に算入した。
あてはめ
労役場留置の執行が開始された平成4年9月21日以降の期間は、罰金刑の執行と未決勾留が競合している。本刑への算入が許容されるのは、控訴提起日の7月14日から労役場留置執行前日の9月20日までの期間(69日間)に限られる。原審がこれを超えて70日を算入したことは、労役場留置中の未決勾留日数を本刑に算入できないとする判例の趣旨に反し、刑法21条の適用を誤ったといえる。
事件番号: 昭和53(あ)2328 / 裁判年月日: 昭和54年4月19日 / 結論: その他
原判決の違法が、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。
結論
労役場留置中の未決勾留日数は本刑に算入できないため、算入日数を69日に修正した限度で原判決を破棄し、自判する。
実務上の射程
別罪の執行(労役場留置を含む)と未決勾留が重なる場合、その期間は実質的な刑の二重評価を避ける観点から、本刑への算入対象から除外されるべきという実務上の準則を明確にしている。
事件番号: 昭和41(あ)1878 / 裁判年月日: 昭和42年5月26日 / 結論: その他
勾留と競合して罰金刑の帰刑処分たる労役場留置の執行が行なわれた場合には、自由刑の執行が競合して行なわれた場合と同様、その勾留日数を刑法第二一条により本刑に算入することは違法と解すべきである(昭和二九年(あ)第三八九号同三二年一二月二五日大法廷判決、刑集一一巻一四号三三七七頁参照)。
事件番号: 昭和24(れ)2513 / 裁判年月日: 昭和30年3月16日 / 結論: 棄却
一 勾留状記載の被疑事実が公判請求書記載の公判事実中に包含されていないとの理由で勾留を取り消した場合にはその未決勾留日数を本刑に算入することはできない。 二 刑法第二一条にいわゆる未決勾留は当該事件に関する判決確定前の勾留であればその勾留が適法であると不法であるとを問わない。
事件番号: 昭和39(あ)1871 / 裁判年月日: 昭和40年1月22日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】確定刑の執行と未決勾留状の執行が競合している場合、実質的には一個の拘禁のみが存在するため、当該重複期間を未決勾留日数として本刑に算入することは許されない。 第1 事案の概要:被告人は、別件の傷害、傷害致死等の罪により懲役5年等の確定判決を受け、その刑の執行中であった。一方で、本件の刑事被告事件につ…