判旨
確定刑の執行と未決勾留状の執行が競合している場合、実質的には一個の拘禁のみが存在するため、当該重複期間を未決勾留日数として本刑に算入することは許されない。
問題の所在(論点)
確定刑の執行と未決勾留状の執行が重複している場合において、刑法21条に基づき、その重複期間を未決勾留日数として本刑に算入することができるか。
規範
刑の執行と勾留状の執行とが競合している場合には、身体拘束の実態としては一個の拘禁のみが存在するものと解すべきである。したがって、このように確定刑の執行が先行・継続している期間については、刑法21条に基づき未決勾留日数を本刑に算入することはできない(算入すれば被告人に不当な利益を与えることになり、同条の適用誤りとなる)。
重要事実
被告人は、別件の傷害、傷害致死等の罪により懲役5年等の確定判決を受け、その刑の執行中であった。一方で、本件の刑事被告事件についても勾留状の執行を受けていた。原審(控訴審)は、本件の控訴棄却判決を言い渡す際、控訴審における未決勾留日数中の110日を本刑に算入したが、この算入された期間はすべて前示確定刑(懲役5年)の執行期間と重複していた。
あてはめ
被告人の本件における原審(控訴審)での未決勾留期間は、既に確定していた前示懲役5年の刑の執行と完全に重複している。身体拘束が競合する場合、受刑者としての拘束が優先・継続している以上、これをさらに未決勾留として評価し、本刑から減軽するための算入を行うことは、同一の拘禁期間を二重に評価することになる。したがって、重複する110日を本刑に算入した原判決の判断は、実質的な拘禁の単一性に反し、刑法21条の解釈を誤ったものといえる。
結論
確定刑の執行と重複する未決勾留日数を本刑に算入することは違法であり、当該算入部分は破棄を免れない。
実務上の射程
実務上、未決勾留日数の算入(刑法21条)の可否を検討する際、当該期間に別件の確定刑の執行が重なっていないかを必ず確認すべきとする指針。答案上では、未決勾留日数の算入が問題となる場面で、身体拘束の性質(受刑としての拘束か未決としての拘束か)を区別する根拠として引用する。
事件番号: 平成4(あ)1180 / 裁判年月日: 平成5年4月13日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数は、刑法21条に基づき本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は暴力行為等処罰法違反等で勾留中、別罪(傷害罪)により罰金30万円に処せられた。その後、当該罰金刑の換刑処分として平成4年9月21日から労役場留置の執行が開始…
事件番号: 昭和24(れ)2513 / 裁判年月日: 昭和30年3月16日 / 結論: 棄却
一 勾留状記載の被疑事実が公判請求書記載の公判事実中に包含されていないとの理由で勾留を取り消した場合にはその未決勾留日数を本刑に算入することはできない。 二 刑法第二一条にいわゆる未決勾留は当該事件に関する判決確定前の勾留であればその勾留が適法であると不法であるとを問わない。
事件番号: 昭和53(あ)2328 / 裁判年月日: 昭和54年4月19日 / 結論: その他
原判決の違法が、罰金刑の換刑処分としての労役場留置の執行と競合する未決勾留日数の一部を裁量により本刑に算入した点にのみある場合においては、原判決中、未決勾留日数算入の部分のみを破棄し、その余の部分に対する上告を棄却すべきである。