判旨
被告人が勾留されつつ別罪の刑の執行を受けている場合、その重複期間は刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入の対象とはならない。勾留と既決刑の執行が競合する期間は、実質的に刑の執行としての性質を有するためである。
問題の所在(論点)
被告人が未決勾留されている期間中に、別罪の確定判決に基づく刑の執行がなされた場合、その重複期間を本刑に算入することができるか。刑法21条の「未決勾留」の意義が問題となる。
規範
刑法21条に基づき、判決確定前の未決勾留日数を本刑に算入することができるが、勾留と別罪の刑の執行が競合している場合、その重複する期間の未決勾留日数を本刑に算入することは許されない。
重要事実
被告人は本件(A事件)で勾留されていたが、その勾留期間中に別罪(B事件:競馬法違反)の懲役4月の刑が確定し、昭和40年7月13日から同年11月12日までその刑の執行を受けた。本件の控訴審(原審)は、昭和40年11月15日に控訴棄却の判決を言い渡す際、原審における未決勾留日数中の60日を本刑に算入すると判断した。しかし、この60日の中には上記B事件の刑の執行期間が大部分含まれていた。
あてはめ
被告人がB事件の刑の執行を受けていた昭和40年7月13日から同年11月12日までの期間は、本件A事件の勾留と競合している。最高裁判例(昭和32年12月25日大法廷判決)によれば、このような重複期間は未決勾留としての性質を失い、本刑への算入は認められない。したがって、本件において算入可能な未決勾留日数は、B事件の刑期終了日の翌日(11月13日)から原判決言渡の前日(11月14日)までの2日間に限定される。原審が60日を算入したのは刑法21条の適用を誤った違法がある。
結論
勾留と刑の執行が重複する期間を本刑に算入することは違法である。原判決のうち、重複期間を含めて60日の算入を認めた部分は破棄され、正当な算入日数である2日に変更される。
実務上の射程
司法試験において刑法の罪数や執行段階の問題が出題された際、未決勾留日数の算入の可否を判断する基礎となる。特に「別罪の刑の執行中」という事実がある場合、その期間は機械的に未決勾留として扱わず、算入対象から除外すべきという処理が必要になる。
事件番号: 昭和40(あ)1537 / 裁判年月日: 昭和40年11月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人が勾留中に別罪の懲役刑の執行を受けた場合、勾留と刑の執行が重複する期間については、未決勾留日数を本刑に算入することはできない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗罪等で勾留されていたが、その期間中に別罪の懲役刑につき仮出獄が取り消されたため、残刑の執行を受けた(昭和40年4月2日から同年6月22…