一 他事件につき本刑たる自由刑に算入された未決勾留と重複する未決勾留を、さらに本刑たる自由刑に算入することは、刑法第二一条、刑訴法第四九五条の趣旨に違反し許されない。 二 右重複の有無、範囲を判断するにあたり、本刑に算入された未決勾留の日数は、刑の執行があつたとされる刑量を示すにすぎないものとして扱うべきで、未決勾留期間中の暦に従つた特定の日を起算日としての刑の執行があつたものとすべきではない。
一 他事件につき本刑たる自由刑に算入された未決勾留と重複する未決勾留をさらに本刑たる自由刑に算入することは違法か。 二 右重複の有無、範囲を判断するについての本刑算入未決勾留日数の取扱方。
刑法21条,刑訴法495条
判旨
未決勾留が、他事件の刑の執行期間や、他事件の裁判で既に本刑に算入された他の未決勾留と重複する場合、これをさらに本刑に算入することは二重の利得となり許されない。
問題の所在(論点)
刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入において、他事件の「刑の執行期間」や「既に他事件の本刑に算入された未決勾留期間」と重複する場合、当該期間を重ねて算入することが許されるか。
規範
刑法21条および刑訴法495条の趣旨に鑑み、未決勾留日数を本刑に算入する際、①他事件の刑の執行と重複する期間、および②他事件の裁判確定によりその本刑に算入されて既に刑の執行に替えられた他の未決勾留と重複する期間については、被告人に不当な利益を与えることになるため、本刑算入の対象から除外しなければならない。
重要事実
被告人は本件(窃盗等)で勾留中、別件(監禁致傷等)でも勾留・起訴された。別件については懲役1年6月(未決勾留150日算入)の判決が確定し、昭和39年12月19日から刑の執行が開始された。一方、本件の控訴審(原審)は、昭和39年8月19日から昭和40年1月8日まで未決勾留を継続し、そのうち90日を本刑に算入すると言い渡した。しかし、この原審勾留期間には、別件の刑執行開始後の期間(21日間)および、別件判決により既に本刑算入された未決勾留と重複する期間が含まれていた。
あてはめ
まず、原審勾留期間(143日)のうち、別件の刑執行開始日以降の21日間は、刑の執行自体と重複しており、これを本刑に算入することは不当な利益を与える。次に、本件の未決勾留は、別件の未決勾留とも240日間重複している。この重複期間内には、別件判決で既に算入された160日や法定通算日数等が含まれており、これらを合算すると、本件において新たに算入を認める余地のある未決勾留日数は残されていない。したがって、原審が90日の算入を認めたことは、二重算入を禁止する法理に反する。
結論
他事件の刑執行や既に算入済みの未決勾留と重複する期間を、重ねて本刑に算入することは許されない。したがって、原判決の算入部分は破棄される。
実務上の射程
併合罪とならず別々に裁判が行われる「余罪」がある場合の未決勾留算入の限界を示した。実務上、複数の事件で勾留が競合する場合、一方の事件で既に算入・執行された期間は、他方の事件での算入対象から除外するという「二重算入禁止の原則」を確認する際に用いる。
事件番号: 昭和40(あ)2689 / 裁判年月日: 昭和41年4月26日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】被告人が勾留されつつ別罪の刑の執行を受けている場合、その重複期間は刑法21条に基づく未決勾留日数の本刑算入の対象とはならない。勾留と既決刑の執行が競合する期間は、実質的に刑の執行としての性質を有するためである。 第1 事案の概要:被告人は本件(A事件)で勾留されていたが、その勾留期間中に別罪(B事…