申立の利益を欠く裁判官忌避申立棄却決定に対する不服申立と憲法三一条、三二条、三七条一項
憲法31条,憲法32条,憲法37条1項
判旨
裁判官忌避申立てを却下した裁判に対する不服申立ては、当該裁判官が審理を継続している限りにおいて取り消す実益があり、既に当該裁判官の審理が終了している場合には、取消しの利益が失われる。
問題の所在(論点)
裁判官忌避申立てを却下した決定に対し、不服申立てを行っている間に当該裁判官の審理継続が解消された場合、当該不服申立ては適法か。却下決定を取り消す「実益(訴えの利益)」の有無が問題となる。
規範
裁判官忌避申立て却下の裁判に対する抗告等の不服申立ては、対象となる裁判官が当該事件の審理を継続している限りにおいて、その職務執行を排除するという制度目的を達する実益(訴えの利益)が認められる。これに対し、審理が既に終了し、当該裁判官が職務を執行する余地がなくなった場合には、もはや却下決定を取り消す実益は失われる。
重要事実
抗告人は、裁判官に対する忌避申立てを行ったが、これが却下された。抗告人はこの却下裁判を不服として抗告したが、原審は、当該裁判官が既に審理を継続していないことを理由に、却下裁判を取り消す実益が失われていると判断した。これに対し、抗告人が憲法31条、32条、37条1項違反を主張して特別抗告を申し立てた事案である。
あてはめ
忌避制度は、不公平な裁判をするおそれのある裁判官を職務から排除することを目的とする。本件において、原審が認定した通り、対象となる裁判官は既に当該事件の審理を継続していない。そうであれば、仮に却下決定を取り消したとしても、その裁判官を職務から排除するという目的は既に達せられているか、あるいは排除すべき職務自体が消滅している。したがって、民事訴訟法上の判例法理と同様に、本件刑事手続においても、却下裁判の取消しを求める法的利益は消滅しているといえる。原判断に憲法違反は認められない。
事件番号: 昭和39(し)52 / 裁判年月日: 昭和39年9月29日 / 結論: 棄却
裁判官忌避申立却下の裁判は、当該裁判官が審理を継続している限りにおいては、これを取り消す実益があるけれども、審理を終結し、判決宣告を終つた後においては、右実益が失われるものと解するのが相当である。
結論
裁判官が審理を継続していない以上、忌避申立却下の裁判を取り消す実益はなく、抗告は棄却されるべきである。
実務上の射程
刑事訴訟手続における裁判官忌避の場面だけでなく、民事訴訟法における忌避や、広く不服申立ての利益(訴えの利益)が消滅する場合の判断枠組みとして活用できる。特に「審理の継続」が取消しの実益の存否を分ける基準となる点に射程がある。
事件番号: 昭和23(つ)6 / 裁判年月日: 昭和23年12月24日 / 結論: 棄却
刑訴法第二九條そのものを所論のように憲法第一五條第二項の精神ないし憲法前文の精神に違反するものと論じ去ることはできない。
事件番号: 昭和27(し)41 / 裁判年月日: 昭和28年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】裁判所が決定を下すに当たり、憲法に違反する憲法解釈上の誤りや、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令違反が認められない場合には、特別抗告を棄却すべきである。本件においては、憲法違反を主張する抗告人の主張に理由がないとして、特別抗告を棄却した。 第1 事案の概要:抗告人が、原決定に対して特別抗告を申し…
事件番号: 昭和28(し)98 / 裁判年月日: 昭和29年1月16日 / 結論: 棄却
所論は法廷警察権の行使方法が法令に違反するということを前提とし、忌避の理由がある旨主張するに止まり、この点に関する原決定の判断は正当であるから、所論は憲法の各条規に違反するという前提を欠く。註。原決定は法廷警察権の行使に対しても刑訴三〇九条二項の異議を申し立てることができるが、この判断を誤つたからといつて忌避の理由あり…
事件番号: 昭和36(し)44 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
裁判官忌避の申立を却下した裁判の取消請求は、原裁判を取り消しても実益がないようになつたときは、これを許すべきものでないと解すべく、本件取消請求は既にその申立の利益を失つたものと認められるから、本件特別抗告は、右請求棄却決定の当否について裁判をする実益がなく、結局その理由がないことに帰する。