法定刑超過による非常上告
刑訴法458条
判旨
法定刑の上限を超える罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であることが明らかであるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。
問題の所在(論点)
確定した略式命令において、法定刑の上限(3万円)を超える罰金(4万円)を科したことが、刑訴法458条1号にいう「裁判が法令に違反したとき」および「被告人のために不利益であるとき」に該当するか。
規範
確定判決が法令に違反し、かつ被告人のために不利益であるときは、刑訴法458条1号但書により、当該判決を破棄し、自ら被告事件について判決をすることができる。特に法定刑の範囲を超えて重い刑を科すことは、罪刑法定主義の観点からも許されず、明らかな不利益にあたる。
重要事実
被告人は、トルエンを吸入目的で所持したとして毒物及び劇物取締法違反で起訴された。略式裁判所は、同法24条の3等を適用し、被告人を罰金4万円に処する略式命令を発し、当該命令は確定した。しかし、当時の同条が定める罰金の法定刑の上限は3万円であった。
あてはめ
毒物及び劇物取締法3条の3、24条の3によれば、当該罪に対する罰金の法定刑は3万円以下である。原略式命令が科した罰金4万円は、この法定刑の枠を直接的に逸脱している。したがって、当該命令は法令に違反していることが明白であり、かつ適正な刑罰の範囲を超えて過重な負担を被告人に強いるものであるから、被告人のために不利益であることは明らかである。
事件番号: 平成6(さ)2 / 裁判年月日: 平成7年3月2日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】毒物及び劇物取締法違反の罪に対し、法定刑の上限(罰金3万円)を超える罰金5万円を科した略式命令は、法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、吸入目的でトルエンを含有するシンナーを所持したとして、毒物及び劇物取締法違反により罰金5…
結論
原略式命令を破棄する。被告人を法定刑の範囲内である罰金3万円に処する。
実務上の射程
非常上告の手続きにおいて、量刑が法定刑を逸脱した場合の典型的な救済事例として位置付けられる。答案上は、確定判決の誤りを是正する非常上告の要件(法令違反・被告人の不利益)を具体化する際の基礎資料となる。
事件番号: 昭和59(さ)4 / 裁判年月日: 昭和60年3月1日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令が、罰金の法定刑の上限を超えた刑を処していた場合、当該命令は法令に違反し、かつ被告人に不利益であるため、非常上告により破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人は、呼気1リットルにつき0.3ミリグラムのアルコールを保有する状態で普通貨物自動車を運転したとして、酒気帯び運転の事…
事件番号: 昭和47(さ)1 / 裁判年月日: 昭和48年3月30日 / 結論: その他
【結論(判旨の要点)】法定刑の上限を超える罰金刑を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益であるため、非常上告に基づき破棄されるべきである。 第1 事案の概要:被告人が売春防止法違反の事実により略式命令を受けた事案。小樽簡易裁判所は、罰金刑の最高額が1万円である同法5条1号を適用しながら、被告人に対し罰金3万円を科…
事件番号: 昭和39(さ)10 / 裁判年月日: 昭和40年3月4日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】傷害罪の罰金刑の最高額が当時2万5000円であったにもかかわらず、これを超過して3万円を科した略式命令は、法令に違反し被告人に不利益である。したがって、非常上告に基づき原命令を破棄し、法定刑の範囲内である罰金2万5000円の自判を言い渡すべきである。 第1 事案の概要:被告人は傷害被告事件につき、…
事件番号: 昭和57(さ)1 / 裁判年月日: 昭和57年10月14日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】確定した略式命令が、加重事由がないにもかかわらず法定刑の上限を超えた罰金刑を科していた場合、法令違反かつ被告人にとって不利益であるため、非常上告に基づき破棄される。 第1 事案の概要:被告人は酒気帯び運転の事実(道路交通法違反)により、松阪簡易裁判所から罰金4万円の略式命令を受け、これが確定した。…