いわゆるビニ本写真誌の販売目的所持に対する刑法一七五条の適用を違憲とする主張が排斥された事例
憲法13条,憲法21条,刑法175条
判旨
性器付近を強調する構図で撮影された写真が多数掲載され、芸術性・思想性がなく、専ら好色的興味に訴える「ビニール本」は、刑法175条の「わいせつ」な図画に該当し、その処罰は憲法に違反しない。
問題の所在(論点)
性器を直接露出していないものの、透ける下着を着用し特定の部位を強調した写真誌が、刑法175条にいう「わいせつ」な図画に該当するか。また、これを処罰することが表現の自由(憲法21条等)に違反しないか。
規範
「わいせつ」な図画とは、徒に性欲を刺激し、興奮させ、かつ普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するものをいう。その判断にあたっては、当該文書等の芸術性・思想性による性的刺激の緩和の有無、及びその提示の態様等を総合的に考慮して決定すべきである。
重要事実
被告人両名は、いわゆる「ビニール本」と称される写真誌を販売目的で所持していた。当該写真誌には、性器の透けて見える下着を着用した女性モデルが、ことさらに股間を押し広げている姿態を、性器付近を強調する構図で撮影したカラー写真が多数掲載されていた。一方で、当該写真誌には芸術性や思想性は認められなかった。
あてはめ
本件写真誌は、透ける下着を着用し股間を強調した姿態をカラーで鮮明に写しており、その提示態様は専ら見る者の好色的興味に訴えるものである。これに対し、性的刺激を緩和・解消させるべき芸術性や思想性は一切認められない。したがって、これらの写真は普通人の性的羞恥心を害し、善良な性的道徳観念に反するものとして「わいせつ」性が認められる。
事件番号: 昭和57(あ)859 / 裁判年月日: 昭和58年10月27日 / 結論: 棄却
刑法一七五条は、憲法一三条、二一条、三一条に違反しない。
結論
本件各写真誌はわいせつな図画に当たり、その販売目的所持を刑法175条により処罰することは、憲法13条、21条、25条、31条のいずれにも違反しない。
実務上の射程
性器の直接露出(いわゆる「ヘア」等)がない場合であっても、提示の態様(構図、強調、色彩)や、芸術性・思想性の欠如という文脈的要素を総合考慮して、わいせつ性を肯定しうることの根拠として機能する。答案上は、性表現の自由の限界を論ずる際の、わいせつ概念の当てはめモデルとして重要である。
事件番号: 昭和57(あ)281 / 裁判年月日: 昭和58年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条のわいせつ物頒布罪による処罰は、表現の自由を保障する憲法21条に違反せず、また「わいせつ」の概念は憲法21条、31条が要求する明確性の原則にも反しない。 第1 事案の概要:被告人は、いわゆる「ビニール本」を販売した行為について、刑法175条(わいせつ物頒布罪)の罪に問われた。これに対し…
事件番号: 昭和57(あ)311 / 裁判年月日: 昭和58年10月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条の「わいせつ」概念は憲法31条が要求する明確性の原則に反せず、同条による表現の自由等の制限も、公共の福祉に基づく合理的な制限として憲法13条、21条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、わいせつな文書または図画を販売等したとして、刑法175条違反(わいせつ物頒布罪)に問われた事案…
事件番号: 昭和57(あ)165 / 裁判年月日: 昭和59年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑法175条の「わいせつ」概念は罪刑法定主義に反せず、同条による処罰は表現の自由等を保障する憲法21条、19条、31条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が、刑法175条に基づきわいせつ文書の出版等の罪に問われた事案。弁護人は、同条が読書の自由(憲法21条)や思想の自由(同19条)を侵害し、適…