宅地建物取引業者である法人の代表者がその法人の業務に関し、宅地建物取引業法一三条(昭和五五年法律第五六号による改正前のもの)に違反する名義貸し行為をしたときの罰条
宅建業法13条,宅建業法79条3(昭55法56条による改正前),宅建業法84条
判旨
法人の代表取締役が、法人の業務に関し法人の名義で他人に宅地建物取引業を営ませた場合、両罰規定に基づき、当該代表取締役を処罰規定の直接の「行為者」として処罰すべきである。
問題の所在(論点)
法人の代表者が法人の業務として違反行為を行った場合において、両罰規定の適用により当該代表者を「行為者」として処罰すべきか、また、両罰規定の適用を欠いた判決の効力はどうあるべきか。
規範
法人の業務に関し、法人の代表取締役が法人の名義を用いて違反行為を行った場合、両罰規定(宅地建物取引業法84条等)にいう「その行為者を罰する」の「行為者」には、現実に当該違反行為を行った代表取締役が含まれる。したがって、当該代表取締役に対しては、処罰規定(同法79条3号等)と共に両罰規定を適用して処罰すべきである。
重要事実
A株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関し、同社の名義を用いて他人に宅地建物取引業を営ませた。これは改正前宅地建物取引業法13条(名義貸しの禁止)に違反する行為であった。原判決は、被告人に対して同法13条および79条3号(罰則)のみを適用し、両罰規定である同法84条を適用せずに有罪判決を下した。
あてはめ
本件で名義貸し禁止規定に違反したのはA株式会社であるが、被告人は同社の代表取締役として、同社の業務につき、同社の名義をもって現実に当該違反行為を実行している。このような場合、両罰規定にいう「その行為者を罰するほか」との文言に基づき、被告人は処罰規定の直接の行為者として処罰の対象となる。原判決が両罰規定である84条を適用しなかった点には法適用の誤りがあるといえる。
事件番号: 昭和60(あ)1255 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表者が法人の業務に関し宅地建物取引業法違反の行為をした場合、両罰規定である同法84条により、当該代表者は同法80条の罪の行為者として処罰される。 第1 事案の概要:宅地建物取引業者であるA株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関して、宅地建物取引業法47条1号に規定される重要事項…
結論
被告人は両罰規定の適用により処罰されるべきであり、原判決が両罰規定を適用しなかったことは違法であるが、判例の趣旨に照らせば、この違法は判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
実務上の射程
法人の代表者が法人の業務として犯罪を行った場合、代表者個人を処罰するためには処罰規定(本犯)だけでなく、両罰規定も併せて適用する必要があることを示した。答案上、両罰規定がある事案で自然人の責任を論じる際は、本判決を根拠に両罰規定を適用の根拠として明示する必要がある。ただし、適用漏れがあっても直ちに破棄理由(刑訴法411条1号等)にはならない実務上の運用も示唆している。
事件番号: 昭和59(あ)759 / 裁判年月日: 昭和60年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表者が、法人の業務に関し無免許で宅地建物取引業を営んだ場合、宅地建物取引業法84条(両罰規定)を適用し、同法79条2号の罪の「行為者」として処罰される。 第1 事案の概要:被告人は、株式会社Aを設立し、同社の代表者として、同社の業務に関し宅地建物取引業法3条1項の免許を受けないで宅地建物取…
事件番号: 昭和55(あ)1803 / 裁判年月日: 昭和57年9月9日 / 結論: 破棄差戻
宅地建物取引業法一三条一項、七九条三号は、自己の名義をもつて他人に宅地建物取引業を営ませる行為につき、その相手方が右取引業を営む免許を受けていると否とにかかわりなく、一律にこれを禁止、処罰する趣旨である。
事件番号: 昭和49(あ)1624 / 裁判年月日: 昭和52年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人会社の代表者が辞任し、後任者が就任した後に、旧代表者の名義で提起された上告は、代表権のない者による申立てとして不適法である。 第1 事案の概要:被告人会社について、代表者Aの名義で上告申立書が提出された。しかし、登記簿謄本によれば、Aは当該上告申立て当時、既に代表取締役を辞任し、その旨の登記…
事件番号: 令和3(あ)1752 / 裁判年月日: 令和5年10月16日 / 結論: 棄却
被告人が、個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因とは、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いがあるとしても、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する…