会社代表者でない者の申し立てた上告が不適法とされた事例
刑訴法385条1項
判旨
被告人会社の代表者が辞任し、後任者が就任した後に、旧代表者の名義で提起された上告は、代表権のない者による申立てとして不適法である。
問題の所在(論点)
代表権を喪失した旧代表者が被告人会社を代表して行った上告申立ての有効性(刑事訴訟における法人の代表権の存否)。
規範
法人を被告人とする刑事訴訟において、訴訟行為を行う代表者は、当該行為時において有効な代表権を有していなければならない。代表権を喪失した者が法人の名義で行った訴訟申立ては、代理権・代表権の欠如により不適法となる。
重要事実
被告人会社について、代表者Aの名義で上告申立書が提出された。しかし、登記簿謄本によれば、Aは当該上告申立て当時、既に代表取締役を辞任し、その旨の登記も完了していた。また、後任としてBが代表取締役に就任していた。
あてはめ
本件では、上告申立時において、Aは既に被告人会社の代表取締役を辞任しており、法的権限を喪失していたことが登記簿上も明らかである。後任の代表取締役Bが存在する以上、Aは被告人会社を代表して訴訟行為を行う資格を有しない。したがって、Aが被告人会社のためにした上告申立ては、権限のない者による申立てに該当する。
事件番号: 昭和58(あ)287 / 裁判年月日: 昭和60年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表取締役が、法人の業務に関し法人の名義で他人に宅地建物取引業を営ませた場合、両罰規定に基づき、当該代表取締役を処罰規定の直接の「行為者」として処罰すべきである。 第1 事案の概要:A株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関し、同社の名義を用いて他人に宅地建物取引業を営ませた。これ…
結論
被告人会社の上告申立ては不適法であり、棄却(刑訴法414条、385条1項)を免れない。
実務上の射程
法人の代表者が交代した際の訴訟行為の効力を判断する基準となる。実務上、上告申立て等の重要な訴訟行為に際しては、行為時点での代表権の有無を登記簿等で確認する必要があることを示唆している。なお、本判決は代表権喪失後の行為について形式的に判断しており、表見代表等の民事法上の概念が刑事訴訟に適用される余地については否定的な態度と解される。
事件番号: 令和3(あ)1752 / 裁判年月日: 令和5年10月16日 / 結論: 棄却
被告人が、個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因とは、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いがあるとしても、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する…
事件番号: 昭和60(あ)1255 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表者が法人の業務に関し宅地建物取引業法違反の行為をした場合、両罰規定である同法84条により、当該代表者は同法80条の罪の行為者として処罰される。 第1 事案の概要:宅地建物取引業者であるA株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関して、宅地建物取引業法47条1号に規定される重要事項…
事件番号: 昭和59(あ)759 / 裁判年月日: 昭和60年12月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表者が、法人の業務に関し無免許で宅地建物取引業を営んだ場合、宅地建物取引業法84条(両罰規定)を適用し、同法79条2号の罪の「行為者」として処罰される。 第1 事案の概要:被告人は、株式会社Aを設立し、同社の代表者として、同社の業務に関し宅地建物取引業法3条1項の免許を受けないで宅地建物取…