法人の代表者がその法人の行為に関して宅地建物取引業法七九条二号の違反行為をしたときの罰条
宅建業法12条1項,宅建業法79条2号,宅建業法84条
判旨
法人の代表者が、法人の業務に関し無免許で宅地建物取引業を営んだ場合、宅地建物取引業法84条(両罰規定)を適用し、同法79条2号の罪の「行為者」として処罰される。
問題の所在(論点)
法人の代表者が法人の業務として無免許営業を行った場合において、当該代表者を処罰するために両罰規定(宅建業法84条)の適用が必要か。
規範
法人の代表者が、法人の業務に関し無免許で宅地建物取引業を営んだ場合、当該法人が無免許営業の主体(宅建業法12条1項違反)となる。このとき、同法84条(両罰規定)に規定される「その行為者を罰する」旨の定めに従い、自然人である代表者を同法79条2号の罪の実行行為者として処罰すべきである。
重要事実
被告人は、株式会社Aを設立し、同社の代表者として、同社の業務に関し宅地建物取引業法3条1項の免許を受けないで宅地建物取引業を営んだ。第一審判決は、この事実に対し同法12条1項及び79条2号のみを適用し、両罰規定である同法84条を適用せずに被告人を処罰した。
あてはめ
株式会社Aの設立後の事実については、無免許営業の主体は法人たる株式会社Aである。被告人は同社の代表者として業務を執行しており、その行為は法人の業務に関するものである。したがって、処罰の根拠としては、単に無免許営業を禁ずる規定だけでなく、法人の業務に関して違反行為をした自然人を処罰する根拠となる両罰規定(84条)を適用し、その「行為者」として処罰の対象とすべきである。第一審が同条を適用しなかった点には法令適用の誤りがあるといえる。
事件番号: 昭和60(あ)1255 / 裁判年月日: 昭和60年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表者が法人の業務に関し宅地建物取引業法違反の行為をした場合、両罰規定である同法84条により、当該代表者は同法80条の罪の行為者として処罰される。 第1 事案の概要:宅地建物取引業者であるA株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関して、宅地建物取引業法47条1号に規定される重要事項…
結論
法人の代表者が法人の業務として無免許営業を行った場合、両罰規定を適用して処罰すべきであるが、本件では同条を適用しなかった違法は原判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないため、上告は棄却される。
実務上の射程
法人が主体となる行政刑法違反において、自然人である代表者を処罰する際には、両罰規定の適用が必須であることを示す射程を持つ。答案上では、法人の行為について自然人の刑事責任を問う場面で、処罰根拠条文として両罰規定を摘示し忘れないよう注意するための指針となる。
事件番号: 昭和58(あ)287 / 裁判年月日: 昭和60年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表取締役が、法人の業務に関し法人の名義で他人に宅地建物取引業を営ませた場合、両罰規定に基づき、当該代表取締役を処罰規定の直接の「行為者」として処罰すべきである。 第1 事案の概要:A株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関し、同社の名義を用いて他人に宅地建物取引業を営ませた。これ…
事件番号: 昭和42(あ)1874 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業法第一二条第一項にいう「宅地建物取引業を営む」とは、反覆継続して不特定または多数の者の間に宅地建物売買等の代理もしくは媒介をする意思の下に、右行為をなすことをいい、その回数の多寡は問うところではない。
事件番号: 昭和48(あ)970 / 裁判年月日: 昭和49年12月16日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業法(昭和四六年法律第一一〇号による改正前のもの)一二条一項にいう「宅地建物取引業を営む」とは、営利の目的で反復継続して行う意思のもとに宅地建物取引業法二条二号所定の行為をなすことをいう。
事件番号: 令和3(あ)1752 / 裁判年月日: 令和5年10月16日 / 結論: 棄却
被告人が、個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因とは、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いがあるとしても、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する…