宅地建物取引業法一三条一項、七九条三号は、自己の名義をもつて他人に宅地建物取引業を営ませる行為につき、その相手方が右取引業を営む免許を受けていると否とにかかわりなく、一律にこれを禁止、処罰する趣旨である。
宅地建物取引業法一三条一項、七九条三号の法意
宅地建物取引業法13条1項,宅地建物取引業法79条3号
判旨
宅地建物取引業法13条が禁止する名義貸しは、その相手方が宅建業の免許を受けている者であっても、一律に禁止・処罰の対象となる。
問題の所在(論点)
宅建業法13条が禁止する「自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませる」行為について、その相手方が宅建業の免許を受けている者である場合も、同条の禁止・処罰の対象に含まれるか。
規範
宅建業法13条1項および79条3号(現81条1号)の規定は、文理上、名義貸しの相手方について限定を置いていない。また、名義貸しが行われれば、たとえ相手方が免許保持者であっても、①名義人の社会的・経済的信用に依拠して取引を行う購入者等に不測の損害を及ぼすおそれがあり、②真の当事者が不明確となることで行政上の監督権の適切な行使が困難となる。したがって、同法は相手方の免許保持の有無にかかわらず、一律に名義貸しを禁止・処罰する趣旨であると解すべきである。
重要事実
被告人らが、宅建業法13条の規定に違反して、自己の名義をもって他人に宅地建物取引業を営ませたとして起訴された事案。原審は、同条の禁止対象は「免許を受けていない者」に名義を貸す場合に限られると判断し、無罪を言い渡したため、検察側が上告した。
事件番号: 昭和58(あ)287 / 裁判年月日: 昭和60年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の代表取締役が、法人の業務に関し法人の名義で他人に宅地建物取引業を営ませた場合、両罰規定に基づき、当該代表取締役を処罰規定の直接の「行為者」として処罰すべきである。 第1 事案の概要:A株式会社の代表取締役である被告人は、同社の業務に関し、同社の名義を用いて他人に宅地建物取引業を営ませた。これ…
あてはめ
本件において、原審は相手方が免許保持者であることを理由に無罪としたが、法13条1項は「他人に」と規定するのみで相手方を限定していない。名義貸しを許容すれば、取引当事者の外観と実態が乖離し、一般消費者が名義人の信用を信頼して取引に入った場合に不測の損害を被る危険が生じる。さらに、免許制度に基づく行政監督の対象が不明確になることは、免許の有無を問わず発生する弊害である。したがって、相手方が免許を有していたとしても、名義を貸した行為は同条の禁止する名義貸しに該当すると評価される。
結論
相手方が宅建業の免許を受けている者であっても、名義貸しは一律に禁止・処罰される。したがって、原判決には法令の解釈を誤った違法がある。
実務上の射程
行政法規の解釈において、文理および立法趣旨(取引の安全と監督の適正)から、形式的な要件(相手方の免許の有無)による限定を否定した事例。答案上は、宅建業法違反の成否のみならず、名義貸し契約の私法上の無効(公序良俗違反)を検討する際の強行法規性の根拠としても活用できる。
事件番号: 昭和45(あ)1889 / 裁判年月日: 昭和46年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】職業選択の自由や営業の自由は公共の福祉のため合理的な理由があれば制限が許され、無免許での宅地建物取引業の禁止は具体的弊害発生の有無を問わず合憲である。また、宅地建物取引業法上の「宅地」とは、現に建物の敷地である土地に限らず、建物の敷地に供する目的で取引される土地を広く指称する。 第1 事案の概要:…
事件番号: 昭和48(あ)970 / 裁判年月日: 昭和49年12月16日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業法(昭和四六年法律第一一〇号による改正前のもの)一二条一項にいう「宅地建物取引業を営む」とは、営利の目的で反復継続して行う意思のもとに宅地建物取引業法二条二号所定の行為をなすことをいう。
事件番号: 昭和60(あ)93 / 裁判年月日: 昭和63年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宅地建物取引業者が自ら購入者となる取引についても、規制を及ぼさなければ取引の公正が害される等の弊害が生ずるおそれがあるため、宅地建物取引業法による規制は憲法22条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は宅地建物取引業者であったが、自ら宅地又は建物の購入者となる取引を行った。この際、宅地建物取…
事件番号: 令和3(あ)1752 / 裁判年月日: 令和5年10月16日 / 結論: 棄却
被告人が、個人として免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因と、法人の代表者として法人の業務に関し免許を受けないで宅地建物取引業を営んだという訴因とは、個人として宅地建物取引業を営んだのか、法人の業務に関し法人の代表者としてこれを営んだのかに違いがあるとしても、被告人を行為者とした同一の建物賃貸借契約を媒介する…