判旨
職業選択の自由や営業の自由は公共の福祉のため合理的な理由があれば制限が許され、無免許での宅地建物取引業の禁止は具体的弊害発生の有無を問わず合憲である。また、宅地建物取引業法上の「宅地」とは、現に建物の敷地である土地に限らず、建物の敷地に供する目的で取引される土地を広く指称する。
問題の所在(論点)
1. 具体的弊害のない無免許営業や業者仲介のある無免許営業を処罰することは、憲法22条1項の職業選択・営業の自由を侵害し違憲か。 2. 宅地建物取引業法2条1号にいう「宅地」の定義如何。
規範
職業選択・営業の自由(憲法22条1項)は無制限ではなく、合理的な理由があれば、具体的弊害発生の有無を問わず、公共の福祉のために一般的に制限することが許される。また、宅地建物取引業法2条1号にいう「宅地」とは、現に建物の敷地に供されている土地のみならず、地目や現況を問わず、広く建物の敷地に供する目的で取引の対象とされた土地を指す。
重要事実
被告人は、宅地建物取引業の免許を受けずに、複数回にわたり土地の売買等の取引(宅地建物取引業)を行ったとして、同法違反(無免許営業)に問われた。被告人側は、不正行為を伴わない取引や、免許を受けた業者の仲介がある取引まで処罰の対象とすることは職業選択の自由を侵害し違憲であると主張した。また、対象となった土地が同法上の「宅地」に該当するかについても争われた。
あてはめ
1. 営業の自由に対する制限は、合理的な理由に基づく公共の福祉のためのものであれば許容される。本法の目的は取引の公正と流通の円滑化にあり、無免許営業を一律に処罰することは、具体的弊害の有無や他業者の仲介の有無にかかわらず、法の目的を達成するための合理的な制限として正当化される。 2. 「宅地」の意義については、法の目的が適正な取引の確保にある以上、現況にかかわらず、将来的に建物の敷地として利用される目的で取引される土地をすべて含めるべきである。
結論
本件各行為は可罰的違法性を有し、無免許営業を処罰する規定は憲法22条に違反しない。また、本件の土地は「宅地」に該当するため、有罪とした原判断は正当である。
事件番号: 昭和48(あ)970 / 裁判年月日: 昭和49年12月16日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業法(昭和四六年法律第一一〇号による改正前のもの)一二条一項にいう「宅地建物取引業を営む」とは、営利の目的で反復継続して行う意思のもとに宅地建物取引業法二条二号所定の行為をなすことをいう。
実務上の射程
消極的な職業選択の自由(営業の自由)への制約に関する古典的判例であり、具体的弊害の発生を要件とせず形式的な違反をもって処罰することを肯定した点に特徴がある。行政法上の無許可営業の処罰や、宅建業法上の「宅地」の定義(目的概念)の解釈として答案で活用できる。
事件番号: 昭和60(あ)93 / 裁判年月日: 昭和63年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宅地建物取引業者が自ら購入者となる取引についても、規制を及ぼさなければ取引の公正が害される等の弊害が生ずるおそれがあるため、宅地建物取引業法による規制は憲法22条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は宅地建物取引業者であったが、自ら宅地又は建物の購入者となる取引を行った。この際、宅地建物取…
事件番号: 昭和55(あ)1803 / 裁判年月日: 昭和57年9月9日 / 結論: 破棄差戻
宅地建物取引業法一三条一項、七九条三号は、自己の名義をもつて他人に宅地建物取引業を営ませる行為につき、その相手方が右取引業を営む免許を受けていると否とにかかわりなく、一律にこれを禁止、処罰する趣旨である。
事件番号: 昭和37(あ)2317 / 裁判年月日: 昭和39年5月23日 / 結論: 棄却
弁護人の憲法第三九条違反を主張する点は、刑罰法規については憲法第三九条によつて事後法の制定は禁止されているけれども、民事法規については憲法は法律がその高価を遡及せしめることを禁止していないことは、当裁判所判例(昭和二三年(オ)第一三七号同二四年五月一八日大法廷判決、民集三巻六号一九九頁)とするところであつて、所論の宅地…
事件番号: 昭和42(あ)1874 / 裁判年月日: 昭和43年2月1日 / 結論: 棄却
宅地建物取引業法第一二条第一項にいう「宅地建物取引業を営む」とは、反覆継続して不特定または多数の者の間に宅地建物売買等の代理もしくは媒介をする意思の下に、右行為をなすことをいい、その回数の多寡は問うところではない。