一 公職選挙法一三八条一項、昭和五七年法律第八一号による改正前の公職選挙法二三九条三号、一二九条、二三九条一号の各規定は憲法一五条、二一条に違反しない 二 公職選挙法二五二条一項の規定は憲法一五条、二一条、三一条に違反しない 三 公職選挙法一三八条一項、二五二条一項、昭和五七年法律第八一号による改正前の公職選挙法二三九号三号を適用しても憲法三一条に違反するものではないとされた事例
憲法19条,憲法21条,憲法31条,公選法138条1項,公選法252条1項,公選法239条3,公選法129条,公選法239条1項
判旨
公職選挙法138条1項の戸別訪問禁止規定、同法129条の選挙運動期間制限規定、及び同法252条1項の選挙権・被選挙権の停止規定は、憲法15条、21条、31条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法における戸別訪問の禁止(138条1項)、選挙運動期間の制限(129条)、及び選挙犯罪に伴う公民権停止(252条1項)の各規定が、表現の自由、参政権、適正手続を定めた憲法21条、15条、31条に抵触するか。
規範
選挙の自由と公正を確保するための合理的かつ必要最小限度の制限は憲法に違反しない。戸別訪問の禁止は、意見表明の自由を直接制限するものではなく、選挙の公正を害するおそれのある不当な運動方法を禁止するものである。また、選挙権・被選挙権の停止についても、公正な選挙制度を維持するための合理的制限として許容される。
重要事実
被告人が、公職選挙法138条1項(戸別訪問の禁止)、同法129条(事前運動の禁止等)の規定に違反し、選挙運動を行ったとして起訴された事案。被告人側は、これらの禁止規定及び同法252条1項(選挙犯罪による権利停止)が、憲法15条(参政権)、21条(表現の自由)、31条(適正手続)に違反し、違憲であると主張して上告した。
あてはめ
判例(昭和44年4月23日大法廷判決等)が既に示した判断枠組みを維持し、戸別訪問禁止等の規定は選挙の自由公正を確保するための合理的な制限であると判断される。本件においても、右規定を適用することが適正手続(憲法31条)に違反するとはいえない。また、公職選挙法252条1項の公民権停止規定についても、選挙の公正を確保するという目的との間に合理的な関連性が認められる。
結論
本件各規定は憲法15条、21条、31条のいずれにも違反せず、合憲である。したがって、本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制約の合憲性を論ずる際のリーディングケース(昭和44年判決等)を再確認したもの。答案上は、LRAの基準等の厳格な審査を求める主張に対し、判例が「選挙の公正」を重視して広範な立法裁量を認めている文脈で使用する。特に戸別訪問や公民権停止の合憲性を論じる際の確実な根拠となる。
事件番号: 昭和58(あ)1234 / 裁判年月日: 昭和60年12月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法による戸別訪問の禁止、文書頒布の制限、および選挙犯罪による公民権停止の規定は、憲法21条、15条、14条等に照らし、いずれも合憲である。 第1 事案の概要:被告人は、選挙運動に際して公職選挙法138条1項が禁止する戸別訪問を行い、また同法142条1項の制限に違反して文書を頒布した。さらに…