公職選挙法一三八条一項、一四二条一項、二五二条と憲法前文、一四条一項、一五条一項、三項、二一条一項、三一条、四一条、四三条一項、四四条
公選法138条1項,公選法142条1項,公選法252条,憲法前文,憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法21条1項,憲法31条,憲法41条,憲法43条1項,憲法44条
判旨
公職選挙法による戸別訪問の禁止、選挙運動期間の制限、及び文書図画の配布制限等の規定は、憲法21条1項や15条等に違反しない。また、選挙犯罪に伴う公民権停止規定も憲法に違反せず、公訴提起に違法・不当な事情がない限り公訴権の濫用にも当たらない。
問題の所在(論点)
1. 公職選挙法による戸別訪問の禁止、選挙運動期間の制限、文書図画の配布制限は、憲法21条1項等の表現の自由を侵害し違憲か。 2. 選挙犯罪による公民権停止の規定は、憲法15条等の参政権を侵害し違憲か。 3. 本件公訴の提起は公訴権の濫用として憲法31条等に違反するか。
規範
公職選挙法上の選挙運動規制(戸別訪問の禁止、期間制限、文書図画の制限)は、選挙の公正を確保し、自由な意思決定を妨げる弊害を防止するための合理的かつ必要最小限度の制限であり、憲法21条1項、15条等に違反しない。また、選挙犯罪による公民権停止(同法252条)も、選挙の純潔性を保つ目的から合理性を有し、憲法14条や15条等に違反しない。公訴権の濫用については、公訴の提起を違法又は不当とするような特段の事情がない限り、憲法31条等の適正手続に反することはない。
重要事実
被告人は、公職選挙法が禁じる戸別訪問(138条1項)、選挙運動期間前の運動(129条)、及び法定外の文書図画の配布(142条1項)等を行ったとして、同法違反の罪で起訴された。被告人側は、これらの規制規定が表現の自由(憲法21条1項)や参政権(15条)を侵害し違憲であること、また有罪に伴う公民権停止(252条)が違憲であること、さらには本件公訴提起が公訴権の濫用(31条違反)に当たることを主張して上告した。
あてはめ
1. 公職選挙法の各規制(138条1項、129条、142条1項等)の合憲性については、既に確立された大法廷判決(昭和44年4月23日)の趣旨に照らし、選挙の公正確保という正当な目的のための合理的な制限であり、合憲であると解される。 2. 公民権停止規定(252条)についても、過去の大法廷判決(昭和30年2月9日)の通り、選挙の公正を害した者に対する制裁として合理性を有し、違憲ではない。 3. 公訴権の濫用については、本件において公訴提起を違法または不当とするような具体的・客観的な事情は認められないため、憲法31条違反の前提を欠く。
結論
本件各規制および公民権停止規定は合憲であり、公訴権の濫用も認められない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由をめぐる憲法問題において、既存の合憲判例(戸別訪問禁止等)を追認する際の射程を確認する。刑事手続上の論点としては、公訴権の濫用を主張する際のハードルの高さを示す実務上の参照例となる。
事件番号: 昭和57(あ)952 / 裁判年月日: 昭和59年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法による戸別訪問の禁止、法定外選挙運動用文書頒布の規制、およびこれらに伴う公民権停止規定は、憲法15条、21条、31条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、特定の選挙に際し、候補者Aに投票を得させる目的で選挙人9名宅を戸別に訪問し、投票を依頼した。また、法定外の選挙運動用文書を頒布…