公職選挙法一三八条一項、二三九条三号、一四二条一項、二四三条三号、二五二条の合憲性(罰則はいずれも昭和五七年法律第八一号による改正前のもの)(補足意見がある)
公選法138条1項,公選法239条3号,公選法142条1項,公選法243条3号,公選法252条
判旨
公職選挙法による戸別訪問の禁止、文書頒布の制限、および選挙犯罪による公民権停止の規定は、憲法21条、15条、14条等に照らし、いずれも合憲である。
問題の所在(論点)
公職選挙法における(1)戸別訪問の禁止(138条1項)、(2)文書頒布の制限(142条1項)、(3)選挙犯罪による公民権の停止(252条)という各規制が、憲法21条、15条、14条等に違反し、選挙運動の自由を不当に侵害するか。
規範
選挙の自由と公正を確保するための規制は、その目的が正当であり、かつ規制の態様が目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法21条等の表現の自由を侵害せず合憲である。戸別訪問禁止、文書頒布制限、公民権停止の各規定は、選挙の公正を害する弊害を防止し、自由かつ公平な選挙制度を維持するための合理的規制として、判例上確立された判断枠組みに従い合憲と解される。
重要事実
被告人は、選挙運動に際して公職選挙法138条1項が禁止する戸別訪問を行い、また同法142条1項の制限に違反して文書を頒布した。さらに、これらの選挙犯罪に伴い同法252条に基づく公民権の停止が問題となった。被告人側は、これらの規定が憲法21条(表現の自由)、15条(参政権)、14条(法の下の平等)等に違反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
判旨は過去の判例(昭和44年大法廷判決等)を引用し、以下の通り判断した。まず、戸別訪問禁止は、買収等の不正行為の温床となりやすく、選挙の公正を害する蓋然性が高いため、禁止の必要性・合理性が認められる。次に、文書頒布の制限も、無制限な頒布が選挙費用を増大させ、資金力による不平等を招く懸念があるため、制限は許容される。さらに、公民権停止規定も、選挙の清廉性を維持するための制裁・予防措置として、合理的理由があり不当な差別には当たらない。したがって、本件被告人に対する各規定の適用は、何ら憲法に違反するものではない。
結論
公職選挙法138条1項、142条1項、252条の各規定は憲法に違反せず、本件上告は棄却される。
実務上の射程
選挙運動の自由に関する典型的な合憲判例である。答案上は、表現の自由の制約として「目的が正当で、手段が合理的かつ必要最小限か」という二重の基準論等を意識しつつ、判例が選挙の公正確保という「公の福祉」を重視している点に留意して、合憲の結論を導く際に活用する。
事件番号: 昭和57(あ)952 / 裁判年月日: 昭和59年3月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法による戸別訪問の禁止、法定外選挙運動用文書頒布の規制、およびこれらに伴う公民権停止規定は、憲法15条、21条、31条等に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は、特定の選挙に際し、候補者Aに投票を得させる目的で選挙人9名宅を戸別に訪問し、投票を依頼した。また、法定外の選挙運動用文書を頒布…