一 公職選挙法一三八条の規定が憲法二一条に違反しないとされた事例 二 公職選挙法一四六条の規定が憲法二一条に違反しないとされた事例 三 公職選挙法二五二条の規定が憲法一五条に違反しないとされた事例
憲法21条,憲法15条,公選法138条,公選法146条,公選法252条
判旨
公職選挙法138条による戸別訪問の禁止、146条による文書図画の頒布制限、および252条による選挙権・被選挙権の停止は、いずれも憲法21条または15条に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法138条の戸別訪問禁止、146条の文書図画頒布制限、および252条の選挙権・被選挙権停止規定が、表現の自由(憲法21条)や参政権(憲法15条)に抵触し違憲となるか。
規範
公職選挙法が定める選挙運動の制限(戸別訪問の禁止、文書図画の頒布制限等)およびこれに伴う失格条項は、選挙の公正を確保し、有権者の自由な意思決定を妨げる弊害を防止するという正当な目的のための必要かつ合理的な制限であり、憲法21条の表現の自由や15条の参政権を侵害するものではない。
重要事実
被告人が公職選挙法138条(戸別訪問の禁止)および同法146条(文書図画の頒布について禁止を免れる行為の制限)に違反する行為を行い、有罪判決を受けた事案。被告人は、これらの禁止規定および同法252条に基づく選挙権・被選挙権の停止規定が、憲法21条(表現の自由)および15条(参政権)に違反すると主張して上告した。
あてはめ
判決文によれば、最高裁は過去の大法廷判決等を引用し、本件各規定の合憲性を肯定した。具体的には、戸別訪問の禁止は意見表明そのものの禁止ではなく、不当な買収や煩及を防止し選挙の公正を期するための合理的な手段であると解される。また、文書図画の制限や、違反者に対する選挙権停止措置についても、同様に選挙の公正確保という公共の福祉に基づく合理的な制限であると判断している。本件においても、これらの判例の趣旨に照らし、憲法違反の主張は採用できない。
結論
公職選挙法138条、146条、252条の各規定はいずれも合憲であり、被告人の上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限を争う際のリーディングケース。答案では「目的が正当で、手段が目的達成のために必要かつ合理的」という二重の基準論等を意識しつつ、本判例を「選挙の公正確保」という公共の福祉による制約の正当化根拠として引用する。
事件番号: 昭和56(あ)443 / 裁判年月日: 昭和56年6月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法による戸別訪問の禁止、文書図画の掲示・頒布制限、および選挙犯罪による公民権停止の規定は、憲法前文、15条、21条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が公職選挙法に基づき、戸別訪問(138条1項)、文書図画の制限(146条1項)、およびこれらに伴う罰則並びに公民権停止(252条等)…