公職選挙法一三八条一項、一四六条一項の合憲性(憲法二一条)(補足意見がある)
憲法21条,公選法138条1項,公選法146条1項
判旨
公職選挙法138条1項による戸別訪問の禁止、および同法146条1項による文書図画の頒布等の制限は、いずれも表現の自由を保障する憲法21条1項に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法138条1項(戸別訪問の禁止)および同法146条1項(文書図画の頒布・掲示の制限)は、憲法21条1項の保障する表現の自由を侵害し違憲ではないか。
規範
公職選挙法による選挙運動の制限が憲法21条に適合するか否かは、その制限が公正な選挙を確保するために必要かつ合理的であるかという観点から判断される。戸別訪問の禁止(138条1項)および文書図画の頒布・掲示の制限(146条1項)は、選挙の自由と公正を妨げる弊害を防止し、候補者間の平等を確保するという正当な目的を達成するための必要最小限度の制限であり、憲法21条に違反しない。
重要事実
上告人は、公職選挙法において禁止されている戸別訪問(138条1項違反)および文書図画の頒布等(146条1項違反)を行ったとして起訴された。これに対し、被告人側は、これらの規定による選挙運動の制限は憲法21条が保障する表現の自由を不当に侵害するものであると主張して、その違憲性を争った。
あてはめ
最高裁は、戸別訪問の禁止および文書図画の制限に関する過去の判例(大法廷判決等)を引用した。それらによれば、戸別訪問は買収等の不正の温床となりやすく、また文書図画の無制限な配布は資金力による不当な格差を生む恐れがある。本件においても、これらの制限は選挙の公正を期するための合理的な制約であり、国民の表現の自由の重要な部分を実質的に奪うものではないと評価される。
結論
公職選挙法138条1項および146条1項は憲法21条に違反せず、合憲である。したがって、本件上告は棄却される。
実務上の射程
本判決は、選挙運動の自由に対する制約を合憲とする確立した判例法理を再確認するものである。答案作成においては、表現の自由の重要性を認めつつも、選挙の公正という『他者の権利』や『公共の福祉』との調整において、立法府の裁量的判断(必要性・合理性)が尊重される場面として論述する。
事件番号: 昭和59(あ)457 / 裁判年月日: 昭和60年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法138条1項が規定する戸別訪問の禁止は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法21条等の諸規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が選挙運動に際し、投票を依頼する目的で有権者の居宅を連続して訪問した行為(戸別訪問)が、公職選挙法138条1項に抵触するものとして起訴された。…