公職選挙法一三八条一項、二三九条三号、一四二条一項、二四三条三号(罰則はいずれも昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの)の合憲性
公選法138条1項,公選法142条1項,公選法239条3号,公選法243条3号
判旨
公職選挙法による戸別訪問の禁止(138条1項)および文書図画の頒布制限(142条1項)は、表現の自由(憲法21条1項)等の憲法各条項に違反しない。
問題の所在(論点)
公職選挙法138条1項(戸別訪問の禁止)および142条1項(文書図画の頒布制限)が、憲法21条の保障する表現の自由や憲法14条、15条等に違反し違憲ではないか。
規範
公職選挙法が定める戸別訪問の禁止および文書頒布の制限については、選挙の公正を確保し、有権者の自由な意思決定を妨げる不当な影響を排除するという正当な目的のための合理的で必要最小限度の制限であり、憲法21条、14条、15条、31条等に違反しない。
重要事実
被告人らが、選挙運動に際し、公職選挙法138条1項が禁止する戸別訪問を行い、また同法142条1項の制限に反して文書図画を頒布したとして、同法違反(239条3号、243条3号)に問われた事案。弁護人は、これらの規定が表現の自由を保障する憲法21条や法の下の平等を定める14条、さらには市民的及び政治的権利に関する国際規約に違反し違憲であると主張して上告した。
あてはめ
最高裁判所は、先行する大法廷判決(昭和44年4月23日判決等)を引用し、戸別訪問の禁止および文書頒布の制限の合憲性を肯定した。戸別訪問の禁止は、意見の表明そのものの制限ではなく、買収や利害誘導の温床となりやすく、私生活の平穏を害する等の弊害を防止するための態様の規制である。また、文書頒布の制限も、無制限な広告宣伝による選挙の過熱や経済力の差による不公平を是正するための合理的な規制である。したがって、これらの規定は公共の福祉に基づく適法な制約であり、憲法の諸規定に違反しないといえる。
結論
公職選挙法138条1項および142条1項は憲法21条等に違反せず、合憲である。したがって、本件上告を棄却する。
実務上の射程
選挙運動の自由に対する制限の合憲性を判断する際のリーディングケース(昭和44年大法廷判決等)を再確認したもの。答案上では、戸別訪問禁止の是非が問われた際、表現の内容ではなく「時・所・方法」の規制として、目的の正当性と手段の合理性・必要性から合憲とする論理構成の根拠として用いる。
事件番号: 昭和59(あ)457 / 裁判年月日: 昭和60年11月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公職選挙法138条1項が規定する戸別訪問の禁止は、選挙の公正を確保するための合理的な制限であり、憲法21条等の諸規定に違反しない。 第1 事案の概要:被告人が選挙運動に際し、投票を依頼する目的で有権者の居宅を連続して訪問した行為(戸別訪問)が、公職選挙法138条1項に抵触するものとして起訴された。…